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第一話 春が始まる

 今日は生憎の曇りだ。

 ガタンガタン。

電車が線路を走る音が聞こえる。

「次は、冨永山とみながやま〜。お出口は左側です」

車掌しゃしょうの声が車内に響くと同時に、妙な懐かしさを感じた。


 その感覚と同時に、聞き覚えがあるようでないような声が脳内に響き渡る。



 声を聞いた瞬間、たちまち視界が暗転し、青白い空間にいた。

気づくと椅子に座っており、見知らぬ女性が目の前に微笑みながら話しかけてきた。

「また、お会いしましたね。」

 椅子に腰かける少年は、状況が飲み込めずに唖然あぜんとしていると、女性が神妙しんみょう面持おももちでもう一度少年に話しかけた。

「あなたがこの町に来るとゆうことは、それ相応の覚悟があるとお見受けします。ただ、引き返すなら今です。ここで決断なさい。今すぐ記憶を消して、この町から立ち去るか、この町で出会った仲間たちとのかけがえのない記憶を取り戻すか」


 状況を飲み込めずに、数秒考えたが、彼はこの町に来るべくしてきた使命がある、と考え、女性に心象を話した。

「俺は、何がなんだか分からないけど、俺に行けるところはここ以外にない。後者を選ぶ。」

その事を女性に話すと、そっと胸を撫で下ろし、安堵したような表情で話しかけてきた。

「記憶が無くなっていても、そのままですね。あなたの決意、承りました。」



 その声が、二人のいた空間に響き渡ると、電車内に戻っていた。

 彼は、何か重要な決断をしたことを心のどこかでわかっているようだった。

数分間電車に乗っていると、駅に着き、電車を後にした。

 電車をおり、冨永山とみながやま駅につくと、ホームには、学生服を着てボブの髪型をし、黒タイツを履いた女子学生が1人立っていた。

 彼女は、誰かを探しているようで、彼を見るや否やこちらにそそくさと歩いてきた。

「突然で悪いんだけどさ、もしかしてキミが転校生?」

 彼女がそう聞いてくると、彼はコクりと頷いた。

「そっか!よかった~!人違いだったら、どうしようかと思ったよ~」

「あ、そうだ自己紹介がまだだったね!私、羽川はねかわ 衣百合いゆり!キミの名前は?」

杖先えださき 黎慈れいじ、二年生です。」

 話すと、衣百合は驚嘆きょうたんし、黎慈を見た。

「二年生だったんだ!私、あんまり先生から話聞いてなくてさ。そっか、年下か!じゃあ、私の方が先輩だ!って冗談だよ笑。」

「それじゃあ、早速で悪いんだけど、これから学生寮まで案内するからついてきてね!」

 いわれるがまま、衣百合の後をついていくことにした。



 駅構内から出ると、衣百合が黎慈れいじに話しかけた。

「にしてもさ~キミも大変だよね。家庭の事情は仕方ないにしてもさ、こんな辺境へんきょうなところに来てさ~」

「東京から来たんでしょ?都会に比べてなんにもないけど、ゆっくりするには良い場所だからさ。」

 そんな世間話をしていると、いつの間にか学生寮についていた。

「お!ついたね~。ここが、私たちが暮らしている私立河平商工しりつかひらしょうこう学園の学生寮だよ。」

 学生寮の中に入ると、自分の部屋であろう鍵を衣百合から渡された。

「それじゃあ、これ部屋の鍵ね!私、これから明日の始業式の準備だから。また後でね~」

 そう言うと、衣百合は足早に学生寮から出ていった。



黎慈は渡された鍵に書かれていた226の部屋番まで行く途中の廊下で、男子生徒が扉から飛び出して、黎慈にぶつかった。

「ごめん!ちょっと急いでるから!」

 男子生徒はそう言うと、学生寮から出て行った。

その男子生徒の身長は小ぶりで、黎慈れいじよりは年下のようにみえる。

そんな男子生徒のことを後にして、自分の部屋へ荷物を置きに行った。

 部屋に着き開けてみると、そこには1ルームにクローゼットとベッドがあるだけの質素な部屋があった。

 黎慈は荷物を起き、学生寮の回りを探索するべく学生寮を出た。



 先程衣百合と歩いてきた道にコンビニがあったことを覚えており、そこに黎慈は寄ってみることにした。

 数分歩くと、コンビニについた。

 コンビニの前には、おそらく同じ学校であろう男子生徒が二人雑談しており、黎慈は少し聞き耳を立ててみることにした。

「なあ、最近この町で話題の 夢 って知ってるか?」

「あぁ、話には聞いてるけどよ、そんなの都市伝説なんじゃねえの?」

「いやいや、これがまじらしくてさ」

 よくある都市談説の話題らしい。

 黎慈は、あまり興味があった訳ではなかったが、男子生徒に今の話を詳しく聞いてみることにいた。

「唐突で悪いんだけどさ、今の話の 夢 って?」

「なに?ここら辺じゃ見ない顔だけど」

男子生徒は、黎慈に対して見るからに嫌な顔をし、そっけない態度で接してきた。

「今の話、忘れてくんねえか?この町に昔から住んでる奴ら以外には、話すなって言われてんだ。他をあたってくれ」

 黎慈れいじにそう言うと、2人の男子生徒は帰路についていた。

男子学生が帰るのを遠目に見ていると、外はすっかり夕暮れになっていた。

 男子生徒の言動に違和感を感じた黎慈は、コンビニで飲み物を買い、衣百合から夢の話を聞こうと学生寮に帰った。



 学生寮に着くと、ロビーのソファーでくつろいでいる衣百合がいた。

「お、おかえりー。連絡しようと思ってたんだけど、連絡先交換してなかったからさ。」

 そう言うと衣百合は、黎慈にメールアプリのIDを見せてきた。

 黎慈も、スマホを取り出し、メールアプリに衣百合のIDを追加した。

「よし、おっけーだね。わからないことがあったら、なんでも連絡してね!」

そこで黎慈は、先程聞いた 夢 についての話を衣百合に聞こうとした。



「羽川さん、ひとつ聞きたいことがあるんだけど、、」

「いいよ〜なんでも聞いて」

「この町の 夢 って何?」

 この話をした途端、衣百合の顔から一瞬光が消えたように見えた。

「あはは、なんのことかな?私はわからないや」

 衣百合は苦笑いをしながらも、笑顔を無理やり作り黎慈に話していた。

 黎慈は、これ以上詮索せんさくするのはよくないと考えた。

「わかった。何かわかったら連絡して欲しい」

「う、うん。それじゃあ、私は部屋に戻るね。夜ご飯は冷蔵庫にあるから、温めて食べてね」

 そう言うと衣百合は、自分の部屋に戻っていた。



 黎慈は、夕食を食べようと、冷蔵庫を開けた。

 冷蔵庫には、青椒肉絲チンジャオロースが入っていた。

それを温め、自分の部屋に持っていた。

 黎慈は食べた後、少し眠たくなり、軽い仮眠をとるようにした。


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