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チャージアクション(CA)


 ――セーフティーエリア


「なんかね。あの鳥、復活するんだよ。やってもやっても立ち上がるんだ」

「つまり、どういうこと?」

「……ボスに勝てませんでした」

「そっかあ。ダージリン飲む?」


 まだ、そのネタ引っ張るんだ!


 僕はあの後も何度も挑戦した。首を切り落としたのだ。

 しかし、奴はすぐに復活する。元気に動き出して、『キュオ―ッ!」と鳴くのだ。


 これからは『キュオ鳥』と呼んでやろう。キュオ鳥さん、マジでホラー。


「具体的にはどうなってるの?」

「具体的って」

「なくなった首は生えてくるの?」

「ああ。なんか炎っぽいものに包まれてて、その炎があとから新しい頭に置き換わる感じ」

「他の部位も切ってみた?」

「うん。腕や足も切ってみた。でも、みんな首みたいに再生した」

「なるほどね」


 レオーネは紅茶を飲み終えると、花壇に水やりを始めた。


「大きく育つといいわね」


 僕、無視されてる?


「冗談よ」

「ですよねー」


 なんかレオーネは全然、心配してない様子なのだが。


 結構、ピンチじゃないか。何度も復活してくるんだよ?

 はっきり言って、ラスボス級の能力だと思うんだけど。


「簡単よフロト。あの技を使えばいいのよ」


 あの技?


「そうだぜ。勇者にしか使えないあの技を使えば、そんな鳥、楽勝だ」

「……ああ。そうか。あの技を使えばよかったんだ」


 あの技って、なんだろう。


「ねえ、フロト。今、『あの技って、なんだろう』って思わなかった?」

「……」

「まさか、忘れたとは言わないわよね。あなたの師匠も教えてるだろうし、私も散々、あなたに言ったはずだけど。素直で真面目なフロトくんが、まさか忘れるはずないわよね」

「……す、すびばせん」


 なんのことだか、さっぱりです。


「分かったわ。もう一度、説明してあげる。勇者が世界を救うために、最も重要な技。この世界中で勇者にしか使えない、勇者だけの技。あなたの奥義、『チャージアクション』について」




 ★



 ――ボス部屋


「キュオオオオオッ!」


 キュオ鳥が、またしても咆哮を上げる。

 もう聞き飽きたな。こいつ、キュオキュオうるせぇ。


 だが、鳴くだけだ。この鳥は何もしてこない。

 ペタンと座り込んだまま、こちらを見つめるだけだ。


「たぶん、これがキュオ鳥の行動パターンなんだよな」


 ダンジョン内にいるモンスターには、大抵決められた行動パターンがあるものだ。

 で、こいつの場合は、僕が何かするまで動かず固まっていると。


「はああああっ! 〈スラッシュ〉!」


 ――ズバッ! キィン!


 僕が首を斬り下ろすと、鳥はふたたび鳴き始めた。


「キュオオオオオッ キュオオオオオッ!」


 復活! 首のあった位置が炎に包まれて、その位置が新しい首に置き換わる。

 そして、振り出しに戻る。


 攻撃はしてこない。こいつは復活を繰り返しているだけなのである。


 1ターン(T) 僕→攻撃  キュオ鳥→復活

 2    T  僕→攻撃  キュオ鳥→復活

 3    T  僕→攻撃  キュオ鳥→復活

 4    T  僕→攻撃  キュオ鳥→復活


 

 僕とモンスターは、ひたすら上のような行動を繰り返しているだけなのである。


『え? なんで表を書き出したの?』と思われそうだが、これにはちゃんと意味がある。


 さて、これから勇者の奥義『チャージアクション』について説明しよう。


『チャージアクション』

 行動権を放棄することで、次のターンに二回行動が可能になる。二回放棄すると、三ターン目に、三回行動。三回放棄で、4ターン目に四回行動が可能。


「……めちゃくちゃ難しい」


 単純に言うと、1ターンで四回行動できますよ、という話だ。(行動放棄は三回が上限なので、四回行動が限界)


 で、さっきの表に戻ると、


 1ターン(T) 僕→放棄  キュオ鳥→何もしない

 2    T  僕→放棄  キュオ鳥→何もしない

 3    T  僕→放棄  キュオ鳥→何もしない

 4    T  僕→攻撃 僕→攻撃 僕→攻撃 僕→攻撃  キュオ鳥→復活(一回)



 キュオ鳥の復活は行動回数が一回分。つまり、一ターンに一回しか復活できない。

 対して、僕は一ターンに四回、鳥の首を斬れる。つまり、一ターンに三回殺せる。


 おそらく、これがこのボスモンスターの攻略法。名付けて『たくさん殺し』。ダサい。


「チャージアクション!」


 ――キイイイイイイイン!


 僕が叫ぶと、僕の両足が金色に輝いた。

 エフェクトはかっこいいが、このとき僕は何もできなくなる。


 しかし、関係はない。

 さっきも確認したように、この鳥は僕が攻撃するまで何もせず座っているだけなのだ。


「よし、終わりだ。キュオ鳥」


 僕は敵に突っ込んでいくと、


〈スラッシュ〉〈スラッシュ〉〈スラッシュ〉〈スラッシュ〉


 ――ズバッ! キィン!(四回分)


「キュオオオオオッ!」


 思ったとおりだ。最初の一回目は首が戻ったが、二回目以降は首が戻らない。


 ボスモンスター攻略完了である。

 

 

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