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第二話 兄は妹に隠し事なんて出来ないんだよ?

仕事のお昼休憩にかけたので投稿します。

なんだかんだで俺たちの異世界転移生活は順風満帆とは行かないが1ヶ月が経った。


真昼も最初は困惑していたが、「兄さんがよく読んでるラノベみたいな感じでやれば生きていけそうだね」って言われた時には異世界チーレム物を読んでいたのが家族にバレてどこと無く恥ずかしくなっていた…。


小説くらい好きなの読ませてよ!実際にチーレムなんて出来やしないんだから!

俺がモテないのは自分が一番よくわかっているさ。


なんせ命の恩人であるこの教会の銀髪シスターのシルヴィアさんに修道院に住まわせてもらってるこの1ヶ月ずっとお手伝いして来たが良い人ですねってしか言われてないんだぞ!


シルヴィアさんは単純に神父様のことが好きだかららしいが。真昼とシルヴィアさんが恋愛相談みたいなことしてたから知った。

真昼に恋愛相談するくらい仲良くなったのは良いことだとは思うが、恋愛経験ゼロの真昼に恋愛相談してもいい回答は出ないと思うが…。


そんなことを考えながら今日のお手伝いに薪割りをしているといい感じのおじさまと言ったら神父様が声をかけて来た。


「あ、圭くん。今日もお手伝いありがとうございます」


「いえ、お世話になってるのに何もしないのは…一宿一飯の恩ってのがうちの親がよく言っていたので。すでに1ヶ月もお世話になっちゃってますけど…」


ははっ。と頭を掻きながら薪割り用の斧を片付ける。


「気にしなくていいですよ。元々こっちの教会にはあまり人が来ないので子供たちと遊んでくれるだけでも私たちとしては助かっています。子供達も圭くんと真昼さんに遊んでもらって喜んでいますし」


そうは言ってくれるが、確かにこの教会は人の入りが少ない。だからこそ長いことお世話になりっぱなしになるのは良くない。彼らの負担がかかるだけだ。


「神父様。以前からお願いしていた件なんですけど…」


「うちとしては構いませんが、本当に良いんですね…?死ぬかもしれないんですよ?ここで二人して働いてくださってもいいんですよ?」


以前からお願いしていた件。

それは真昼をこの教会で働いて住まわせてもらうこと。

真昼の生活と安全は絶対に保証して貰うこと。

代わりに俺は冒険者になり、真昼を日本に、父さんと母さんの元に帰す手がかりを探す。

例えどれだけ時間がかかっても。真昼の事だけは絶対守ってみせる。


この世界には魔王も勇者も過去の産物だが、今だに迷宮と呼ばれるダンジョンや魔物も跋扈している。


ダンジョンの奥地には任意の場所へ転移することができる物などがあるという。過去にもこの世界に転移して来た人が居るらしく、その人たちは帰って行ったと転移者の仲間だった人が話していたと噂だが存在するくらいだ。


「そうですか…。真昼さんにこのことは?」


「直接いうとカッコつけるなとか兄さん一人だとただの無駄死にだから私もいくとか言いそうですからね。俺が出て行った後にお使いを頼んでいるって事にしてもらえませんか?神様を信仰してる人に嘘をつかせるのは申し訳ないですけど…」


「…誰かを思う嘘であれば神もお許しくださいますよ」


「…ありがとうございます。行動は早いうちに起こしたいので明日の明朝にでも出ようと思っています」


「っ!それはまた急ですね…圭くんとお喋りするのは私としても楽しいのでもう少し…いえ、圭くん達にも帰る家があるのだから止めるのも野暮ですね…明朝に行くのであれば朝私に声をかけてください。流石にそのままで行くと他の冒険者に舐められてしまいますので」


そういい神父様は準備しておきますね。と言って去って行った。


「あれ、兄さん薪割り終わったの?」


神父様を見送った後、神父様から貸してもらった部屋に戻ると真昼がベッドに腰掛けて本を読んでいた。


「終わったよ。流石に1ヶ月もやれば薪割りも慣れて来たから早く終わったよ」


「そっか。じゃあ兄さんはこれから暇だよね?」


パタンと本を閉じて横に置く。真昼が読んでいる本はこの世界の言葉だがご都合主義な小説よろしく何故か読めたから読んでいる。因みに氷魔法の書と書かれていた。

魔法なんて使う事ないだろうが自衛に覚えると良いだろう。使ってるところは見た事ないので覚えてはいないと思うけど。

娯楽が少ないから分からなくても読むしか時間潰せないから仕方ない。


「暇だけどなんかあったっけ?ゴロゴロしてようと思ってたけどなんかやるの?」


「そ。じゃあ私の隣に座って?」


ぽんぽんと呼ばれるから隣に腰掛ける。多分これが彼女とかなら押し倒したくなるんだろうが、俺の隣にいるのは可愛い可愛いマイシスターだ。押し倒そうとは全く思わない。

こっちに来てから1ヶ月、真昼の距離感がバグったのか側にいたがる。


確かに慣れないところに急に飛ばされて訳の分からない状況だ。俺だって真昼と一緒に来てなければ混乱してたはずだ。


真昼が一緒だから兄ちゃんとして頑張ろうと思えるから助かっている。


真昼の距離感も中学に上がった頃くらいの距離だから可愛いものだ。


「…ひざまくら」


「どうぞ」


ボソッと呟く真昼を膝の上に頭を置く。


「…なでて」


「はいはい」


街の大浴場に行って来たのか少し髪が濡れている。ドライヤーがないから綺麗な長い金髪が少し濃くなっている。


「ちゃんと拭かないと髪が痛むぞ?」


「そこにタオルあるから兄さんが拭いて」


「えぇ…」


「はやく」


「はいはいワガママお姫様〜」


真昼を動かさないように枕元にあるタオルに手を伸ばしてから軽く叩くように毛先の方に拭いていく。


「中1以来か?真昼の髪拭いてあげるのって」


「妹の髪を拭いてあげたこと覚えてるなんて兄さんって変態だね」


「そんなこと言う悪い妹にはこうだ!」


流石に怒った俺はわしゃわしゃと濡れた犬を拭くようにゴシゴシと髪を拭く。


「わわわ!!やめて!髪が痛んじゃうよ〜!」


俺としても可愛い妹の頭がボサボサになるのは本意ではないので手櫛で直していく。


「兄さんツンデレだ。男のツンデレは需要ないよ?」


「お前、俺だから別にいいけど他の人にそんな揶揄ったりするなよ?人によってはキレて刃物向けてくるから。この世界だと命の価値って日本よりも低いだろうし」


咎めるように言うと真昼が腹の方に顔を向けて腕を腰に回してくる。


「うん…ごめんなさい。兄さんが生きてて本当によかった…」


「俺が真昼を置いて死ぬわけないだろ?兄ちゃんには妹がいるってだけで不死身のバフかかってんだから」


泣きそうな声をしていた真昼の背中をトントンしながら軽口を言う。


「流石にそれはキモい」


「……笑ってくれれば儲け物だと思ったがストレートに悪口言われると傷つく」


「冗談…。本当にさ、私置いて死んだりしたら呪い殺すからね?」


「怖いな!?真昼が言うと本当にやりそうだから怖いよ…。約束する。絶対に真昼を母さんと父さんのところに帰すまで死なないし死なせない」


「うん…わかった」


真昼が笑顔になった。

それだけで俺は頑張れる。


















「で?何か私に言うことあるよね?」


首筋に冷たい刃物を突きつけられたかのようにヒュ!?っと変な声が出た。


腰に回された腕がどんどん閉まっていく。

ホールドされて逃げられない!


「計ったな!?」


「兄は妹に隠し事なんて出来ないって相場が決まってるんだよお兄さん?」


「何も隠してない!!だから離して!痛い!」


「嘘だね。兄さんが私に優しい時は何か嘘ついてる時だもん」


「俺いつも真昼に優しいはずだよね!?」


「優しいのと甘やかすのは少し違うんだよ兄さん」


衝撃の事実だ。流石に口が裂けても言えるか!と思った矢先、借りている部屋の扉が開かれる。


「圭くーん。神父様が来て欲しいそうですよ?」


救世主キタコレ!


救世主シルヴィアさんが来た事によりこの真実の口みたいなホールドから解放される!


「あらあら、お邪魔でした?」


「待って!行きます!すぐ行きます!」


扉を閉めようとするシルヴィアさんを止める。


「ほ、ほら、神父様のところに早く行かないとだから離して!」


仕方ない…と言わんばかりに離そうとする真昼がシルヴィアさんに声をかけた。


「そう言えば神父様の要件って?」


「あぁ、それは明日の明朝に圭くんが冒険者になるために冒険者ギルドに行くけど、そのまま行くと舐められちゃうから神父様が冒険者時代に使っていた装備をあげるって話で……あ!内緒でしたっけこの話は!?」


神よ、貴方の信徒は嘘をつけない真人間のようですが、僕の救世主にはなってくれなかったようです……。


離そうとしていたホールドを再度ガッチリと掴まれる。


「兄さん。説明してもらえる?」


まだ魔物を見たことはないけれど、多分どんな魔物よりも何なら魔王よりも怖いと思える妹に隠し事なんて出来ないようで、洗いざらい吐きました…。


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