第9話 見えるとか見えないとか
「オマエ、ていうことは、見えてた、ってこと?だろ?」
タケゾーの疑問が二段階打ち上げ花火方式で上がった。
今年の夏は暑いかなあ、と、輝は思う。
「まあ、そういう時代もあったかな。」
「なんだよ。どういう時代だよ。」
「だから、そういう時代だって。お子ちゃま時代。」
「それ、今のオレ達でも通用しない?オレ達、まだまだお子ちゃまですぜ。」
輝はちょっと小首を傾げて、「かもしれない。」と言う。
「ねえ、にいちゃん、その〈はてな〉の顔、やめてくんない。微妙に卯乃ちゃんに似てて、ちょいドキドキする。」
輝が、げっ、と、顔を顰める。
「にーいちゃんも、ドキドキもやめろ。」
「やめろって、ねえ。こっちも好きでしてるわけじゃ、、、」
「少なくとも、〈にーちゃん〉呼びは好きでしてるだろ。」
「そーなんですよ、オレ、にーちゃんが好きでさ。」
「だぁかぁら、」と、輝は言葉を区切るようにようにタケゾーに伝える。「にーちゃん、呼ぶな。」
「だって、運命だから。」
「運命かどうかは実現してから言え。」
「じゃあ、是非にいちゃんもご協力を。」
「やだね。絶対やだ。オレが卯乃に恨まれる。」
「なんでだよ。卯乃ちゃん、いつもオレに優しいぜ。」
輝はちらっとかタケゾーを見て、その肩をポンポンと叩く。
「アイツは、オレ以外の全人類に優しいんだ。オマエも、小学生の手のひらで転がされてんなよ。」
「オレ、卯乃とゃんに転がされるなら、満足だ。」
今度は、輝はさっきより少し時間をかけてタケゾーを不気味そうに眺める。
「タケゾー、オマエ、本当に気持ち悪い男だな。」
輝はしみじみそう言って、「じゃな。」と、手を振って自分の家の方向に分かれていった。
あちゃー。
つい最強ワード〈卯乃〉に惑わされて、本筋を見失っちまったぜ。と、タケゾーは去っていく輝の後ろ姿を見ながら後悔していた。
まだ、、小学生ながら、ここまで男心を捕らえるなんて、卯乃、恐ろしヤツ、と、中学生ながら小学生に恋する男タケゾーも自宅へ向かう。