表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/62

第5話 思い出

 元々親同士が近所に住んでいて、地域の子供イベントで、同じ年の男の子第一子がいるということで家族絡みで仲良く付き合うようになった。

 赤ちゃんの頃からの筋金入りのマブダチだ。


 同じ幼稚園にしようと二家族で相談したのも、共に近くに親も人類もいない地域だったので、どちらかが体調を崩した時、お迎えなど、頼り合えると考えてのことだった。

 その頃の輝はおしゃべりで明るい性格。

 タケゾーも明るくよく身体を動かす子供で、幼稚園でも帰ってからもいつも一緒に遊んでいた。


 その日は幼稚園が休みだった記憶がある。だから、土曜日か日曜日、それとも祝日だったかもしれない。

 輝の家族とタケゾーの家族がたまたま道ですれ違った。

 近所に住んでいるのだから、よくあることだ。

 その時は、輝の家族は3人、性格には母親のお腹に妹がいたので、3.なんとか人で、タケゾーの家族は4人連れだった。

 見かけない女性はタケゾーの祖母、父親の母だと紹介される。言われると、鼻と口元に母と息子らしい面影がある。

 はじめまして、とか、いつもお世話になってます、と、ありきたりの会話が交わされて、二つの家族はまたそれぞれの目的の場所へと別れていく。

 十分距離が開いたところで、輝の母親が夫に、虫の知らせね、と言った。

 輝の父親も妻の言葉に「すごくいい思い出になるといいね。」と頷く。


 数日後、幼稚園の砂場で一緒に山を作りながら、タケゾーはあれかは両親と祖母とサファリパークに行ったことを自慢した。ライオンも見た。しまうまもいた。

 それを聞いて輝はニコニコしながら、「おばあちゃん死ぬ前にみんなで思い出作れてよかったね。」と、タケゾーに言った。

 「おばあちゃん、死なないよ。」

 山を砂をのせていた手を止めて、タケゾーが怒った。

 輝はキョトンとして、「だって、おばあちゃん黒い影を連れてたでしょ?見たでしょ?タケちゃんのおばあちゃん、死ぬよ。」

 「死なないよ。」と、タケゾーがスコップで砂すくって輝にかけて喧嘩になる。

 二人とも泣いて砂まみれで、保育士さんが気がついて引き離した。

 幼児からたどたどしいケンカの原因を聞いた保育士は、先に砂をかけたタケちゃんもいかないけど、お年寄りでも、すぐに死んだりしないのよ。輝ちゃんも勘違いで言っちゃったのかな?ごめんなさいして、仲直りしよ。

 

 けれど、二人は仲直りできない。

 タケゾーは輝を嘘つきだ、と激昂しているし、輝は嘘じゃない、と、言い張る。

 

 その日、保育園の途中でタケゾーを両親が迎えにきた。

 父方の祖母が急逝した。

 これから、家族で地元に帰るというタケゾー一家を保育士が見送る。

 二人を宥めた保育士が園内に戻ってくると、輝が待ち構えていた。

「ほら、死んだでしょ?」と、輝が言う。

 この子はずっとここにいたの?ここからではタケゾーの家族と交わした会話が聞こえるはずがない。どうしてタケちゃんのおばあちゃんが亡くなったってわかったの?

 保育士は無言で不安そうな顔つきで輝を見つめた。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ