表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裴松之先生の「罵詈雑言」劇場  作者: ヘツポツ斎
罵詈雑言劇場 呉編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/76

【巻五二 張昭】豈有兵連禍結

江表傳曰:權既即尊位,請會百官,歸功周瑜。昭舉笏欲褒贊功德,未及言,權曰:「如張公之計,今已乞食矣。」昭大慚,伏地流汗。昭忠謇亮直,有大臣節,權敬重之,然所以不相昭者,蓋以昔駮周瑜、魯肅等議為非也。


臣松之以為

張昭勸迎曹公,所存豈不遠乎?夫其揚休正色,委質孫氏,誠以厄運初遘,塗炭方始,自策及權,才略足輔,是以盡誠匡弼,以成其業,上藩漢室,下保民物;鼎峙之計,本非其志也。曹公仗順而起,功以義立,冀以清一諸華,拓平荊郢,大定之機,在於此會。若使昭議獲從,則六合為一,()()()()()()()()()()()()()!雖無功於孫氏,有大當於天下矣。昔竇融歸漢,與國升降;張魯降魏,賞延于世。況權舉全吳,望風順服,寵靈之厚,其可測量哉!然則昭為人謀,豈不忠且正乎!


(漢籍電子文献資料庫三國志 1221頁 ちくま6-354 批判)



○解説

 孫権そんけん政権における元勲の宿老筆頭と言えば、張昭ちょうしょうをおいて他にないでしょう。とは言えその張昭、孫権が帝位に就いた段階で、それまで授かっていた官位であるとか俸禄をいちど返上したのだそうです。それに応じて孫権、張昭に輔呉将軍という官位を新設して与え、更に婁侯食邑一万戸に封爵。ちなみに一万戸は三公クラスを遙かにぶち抜く食邑です。ただこの扱いはいわゆる名誉職であり、宰相としての大権を振るうような立場ではありませんでした。

 このことについて、虞溥ぐふ江表伝こうひょうでん』は張昭が周瑜しゅうゆ魯粛ろしゅくのような主戦論者をしりぞけ、曹操そうそうに降るべきと説いたことから孫権よりの信頼を損ね、大臣としての働きこそは認められたものの宰相と認められるには至らなかった、と語ります。

 あーのねぇ、裴松之はいしょうし先生、首を突っ込まれます。

 張昭が曹操への投降を薦めたのはまごうことなき忠義心のゆえ! というかそもそも張昭はかんの臣下としての孫策そんさく孫権を盛り立てることが第一義であり、呉の独立なんてものは元々度外視! だいたいあそこで孫権が張昭の進言を容れて降伏さえしてれば、そこで天下は統一されて()()()()()()()()()()()()()()()()! 張昭が悪もんっぽく扱われてんのが不当! ありえませんから!



○皆様のコメント


・波間丿乀斎

 裴松之先生は周瑜や陸遜が嫌いだと言われていますが、ここはさすがに「劉宋りゅうそうの公式な歴史観を動かすわけにはいかなかった」気配を感じざるを得ません。つまり儀礼的にはが、心情的にはしょくが正統国家であった、という歴史観です。どちらの意味でも正統と呼ぶわけにはいかないは、それでも張昭の論を採用さえすれば魏の配下に収まる可能性もあった。しかしそれを周瑜と陸遜が台無しにした。だから裴松之先生の解釈において張昭が至上の名臣でなければならず、周瑜陸遜が最悪の逆臣でなければなりませんでした。

 この歴史観は、恐らく東晋とうしん簡文帝かんぶんてい以降に一気に先鋭化したのでしょう。簡文帝は歴史の経緯を辿れば「簒奪者」と呼ばれてもおかしくはなく、ともなればその息子の孝武帝こうぶていの代にいたり、東晋帝の権威が暴落したと思われます。そのぶん、権威を名分などで強引に糊塗する必要に駆られたのでしょう。これを裏打ちするかのように、晋書しんしょ礼志れいしでは孝武帝の代で様々な儀礼がねじ曲げられていることを記しています。そして東晋の正統な後継者と称する以上、劉宋は東晋末期の歴史観もまた継承せざるを得ない。

 つまり西晋~東晋初期には呉を貶める必要はなく、むしろ称揚する必要があった(旧蜀旧呉を慰撫することを考えれば到底両国の記述を貶められるはずもなかったでしょう)のだけれど、孝武帝の代以降にいたって「五胡から連なる華北のクソどもなんぞ相手にもならない」「ぎょうしゅん以来の皇統の継承者」をアピールすることが求められれば、もはやそれぞれの国の感情がどうこうと言い出す余裕もなくなります。呉の地に国がありながらも平然と呉の国の偉人(つまり周瑜や陸遜)を貶めるのには、もはや地元民の心情なんてまともに汲んでもいられない「鄙地に押しやられた、もと覇権者」の焦り、余裕のなさが感じられます。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ