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原因

「エマ……!」


目を開けると、視界いっぱいにセドリックとルーカスの顔が映りこむ。

キラキラしすぎていて逆に目に悪い。

彼らに支えられながら上体を起こすと、私は医務室のような場所のベットに寝かされていて、部屋には彼らの他にヒューゴとサリムがいた。


「良かった。エマ……ほんとに良かった」


「ったく。心配させるなって言っただろうが」


セドリックとルーカスが心底安心したような声を漏らした。

あぁ、そう言えば私倒れたんだっけ?


「体調はどうじゃ?」


「おかげさまでもう大丈夫です」


「そうか。して、お前さん。あのカードはどこで手に入れたんじゃ?」


カード?幸運のタロットカードの事だろうか。

私はそれを受け取った経緯と巷で話題となっている幸運のタロットカードについて話した。


「雪の積もる森に月明かりが差し、女神のような女性が描かれている、なるほどな。森は生命や旅の象徴、6角形の雪の結晶は安定、月はその形が変わることからその者の成長や再生を意味する。女神はおそらく月の女神じゃな。『旅に出れば成長出来る』と言ったところかの」


まぁ幸運と言えば幸運じゃな。

サリムは淡々と話し続ける。

どうしてそんなことを聞くのだろう?そもそもどうして私が幸運のタロットカードを持ってるって知ってるの?


「倒れた君をセドリックが運ぼうとしたときに、ポケットから落ちたんだ」


ヒューゴが私に幸運のタロットカードを見せながら言う。

あれ……?なんだか光ってる?


「お前、死にかけたんだぞ?魔力欠乏症で」


え、死にかけた?どうして?

それに魔力欠乏症って。


「タロットカードには向きがあると言うことを知っておるか?」


「向き、ですか?」


「そう。トランプの9と6を区別するときに引かれる目印のようなものがタロットカードにもあってな。このカードの正位置は、こっちじゃ」


そう言ってサリムはヒューゴの手からタロットカードを取り、向きを逆にした。

彼曰く、タロットカードが逆向きになると、そのタロットカードの持つ意味も逆になる、つまり悪い意味をとるという。

森は異界への入り口、雪は生命をかき消す死の象徴。月も死と再生の意味を持つのでこの場では死という意味でとる。この女神も月の女神セレーネ―ではなく、ルーナを示していると考えられるらしい。ルーナは得体のしれないミステリアスな女神。夜や冥界との関連が強いとされている。


「このカードはおそらく、月に反応して魔力を吸い取るものじゃ。明日は月食だからな。ここ数日で被害者が出たのもそれが関係している可能性が高い」


「あの……それって私も亡くなった人たちと同じ目に遭ったと言う事ですよね?なんで私は生きているんですか?」


いや、生きているのはラッキーなんだけど。

でも他の人たちは亡くなっているのに、どうして私は助かったのだろうか。


「それはおそらく魔力量の違いじゃな。お前さんの魔力はこのタロットカードの吸い取れる魔力量を大きく超えていたらしい。よって吸い取られてしまったのにも関わらず生命維持に必要な魔力量は十分残ったと言う訳じゃ。恐れ入ったわい」


なるほど。確かに私の魔力量はかなり多い。それこそレオンやセドリックよりも。

あぁヒロインで良かった。初めて思ったかもしれない。


「とはいえこれで糸口が掴めた。よくやった、ミス・シャーロット」


ヒューゴは満足げにタロットカードを眺めている。

確かにそれが原因である可能性が高いことは分かったけど……


「他の被害者を確認したが、タロットカードを所持している者はいなかった。つまり、彼らの死後何者かが回収した可能性が高い」


ルーカスのセリフに私は言葉を失った。

そして再びタロットカードに目を移す。

そう言えばこのタロットカードは光った以外にも変わった点がある。それは絵柄だ。

光っていることで、今まで見えていなかった模様が浮かび上がり、月の女神が奥の神殿を指さす絵になっている。


この絵柄は光ることでしか現れない。

しかし、私が体調を崩し始めてから倒れるまでの間にタロットカードが光ることは無かった。

つまり、このカードはキャパシティーギリギリまで魔力を吸収しないと光らないのではないだろうか。

となれば犯人の狙いは……


「タロットカードの許容量を満たす魔力保持者を探していた……?」


「いや、いくつかのカードを使って魔力を蓄積させていた可能性が高い」


ルーカスはそう言いながらチラチラとヒューゴの方を見ていた。

なんだかソワソワしているようだけど、何かあるのだろうか。


「ヒューゴ様、どうでしたかな?」


「無事許可が下りた。向かうのは明日の朝だ」


「あの……向かうってどこにですか?」


「ラーハ神殿だ」


ルーカスは後ろを向くと無言でガッツポーズをしていた。



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