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ブラックリスト

「はぁ……やっと戻って来られた」


「と言ってもテスト直前ですけどね」


「それは言っちゃダメなやつですよエドガー先輩」


ウィンチェスターアカデミーに戻った次の日。久しぶりに1日しっかり授業を受けた。

普段ならかなり疲れているはずなのに、最近はまともに寝られないくらい忙しかったせいか、授業を受けるだけでいいということがとても楽なことに感じる。


放課後久しぶりにウィーブルでのバイトをしていると、折角のいい気分をエドガーによって壊されてしまった。そう、今日は代休明けの久しぶりの授業日であり、テスト2週間前でもある。

正直に言うとかなりヤバい。

だって忙しかったんだもの。魔法競技大会から交換留学に総合文化祭。ノンストップで降りかかる行事の中心にいたのだから、当然勉強などまともにしているわけがない。


研究や演劇に使う魔法薬についてなどの勉強はしていたが、正直テスト勉強はほとんどしていない。

折角総合文化祭も終わって解放されたのに……

こっちに来てからずっと忙しさに追われている気がする。私に暇な時間など無いのだろうか。


バイトが終わると、私は図書室に直行する。

2週間前とは言え、そろそろやらないと本気でヤバい。


「古代魔法史がほんとにダメなんだよね」


「あーその気持ちわかるわ」


「アルバート?」


図書室で教科書とにらめっこをしていたら、アルバートが声を掛けてきた。

閉館間際、こんな時間に図書室に人がいるというだけでも珍しいのに、まさかアルバートがいるとは。やっぱりチャラそうに見えて根は真面目なんだなと思う。


「エマちゃんはテスト勉強?偉いね」


「うん。アルバートはどうしてここに?」


「俺はエドガー先輩のおつかい。あの人演劇以来俺にばっか雑用振って来るんだよ」


「あはは……」


申し訳ないなとは思うが、私にも変わってあげられるだけの余裕がないので笑ってごまかす。


「あ、ここ間違えてる」


「え?ほんと?」


「ほらここ……」


アルバートに指摘されたところを見ると、確かにメモしていた魔法式が間違っていた。

1つ指摘すると他も気になるようで、結局閉館までアルバートに教わってしまった。

閉館時刻になると、図書室を出てアルバートとともに生徒会室に寄っていくことにした。

閉館時刻まで縛り付けてたんだし、流石にエドガーに遅いと怒られるだろう。私も言って謝らないと。


「失礼します」


生徒会室に入ると、相変わらずエドガーは忙しそうだった。机の上に積まれた書類ももはやインテリアかのように思えてしまう。

エドガーはこちらを見ると、アルバートに向かって「遅いですよ」とため息をついた。


「違うんですエドガー先輩。私が呼び止めてしまって……」


「……あぁ、テスト勉強ですか」


私の持ち物を見てエドガーは納得したような表情を見せ、「根を詰めすぎないように」と言った。どうやらお咎めは回避できたらしい。私はエドガーに生徒会室に常備してあるハーブティーを淹れるとともに、お茶菓子があるからと言われ私たちの分も淹れて軽く談笑した。

内容はほとんど総合文化祭のこと。1年の中でも大きな行事である魔法競技大会と総合文化祭において、新人戦と本戦の総合優勝、論文コンテスト優勝、演劇コンテスト優勝というのは快挙だそう。


もちろん私たちの上の世代が黄金世代と言われているように先輩たちはそもそも優秀なのだが、それを考えてもこれだけの賞を総なめにするのはやはりすごいのだとか。エドガーもまた自慢げに学長たちにも褒められたと話していた。


「あ、もうこんな時間だ」


「ほんとだ。じゃあエドガー先輩、私たちはこれで……」


「あ、そうだ。エマさんは少し残ってください」


私とアルバートが寮へ戻ろうとすると、エドガーは私だけを呼び止めた。

私は不思議に思いながらもそれに応じる。

エドガーはアルバートが出て行ったことを確認すると、生徒会長用の椅子に座った。


「エイド先輩から聞きました。副賞を受け取ったそうですね」


「あぁ、はい」


「貴方の進路希望は伺っていますし、特に疑問に感じることもありませんが、気を付けてください。クリスタルカレッジから連絡がありました。確かではありませんが、今回の件と前回とでヴィムスのブラックリストに貴方の名前が登録されたそうです」


反魔法組織のブラックリストに登録された。それはつまり、組織の構成員が見つけ次第始末するべき人間だと言う事。確かではないと言いつつも、ヴィムスにとって邪魔なものを作り上げ、皇太子暗殺の邪魔をしたとあっては載せられて当然と言えば当然。

知らない間に回避したかった死にゲー展開が思っていたのとは違う形で迫ってきているのが遺憾だけど。


「学校はある程度セキュリティーも人の出入りも徹底されていますから安全ですが、外に出ればそうもいきません。貴方にとって必要な事でしょうから行くなとは言いませんが、くれぐれも気を付けるように」


「はい」


まさかこんな展開になっているとは。

私は心の中で泣きながら生徒会室を後にした。


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