特別な人
「エマさん。僕と踊ってくださいませんか?」
「エマちゃん、俺と踊ろうぜ」
「エマは僕と踊るよね?」
「えーっと……」
もしかしなくてもこれって今の挨拶のせいだったりする?
これだけ目立ってしまえば全員断るなんてことは出来ないし、かといって誰か1人を選ぶと角が立ちそう……
「おいお前らやめろよ」
私たちの中に割って入ってきたのは以外にもヨハンだった。
困っていた私を見かねて間に入ってくれたのだろうか。意外といいところあるじゃん。
「コイツは俺に惚れてるんだぜ?」
前言撤回。やってくれたな。
話をややこしくするな。実際彼らは目の色を変えて私に詰め寄ってきてるし。
どうしようと思っていたら、そこにそれを面白がった彼の片割れであるノエルも加わり事態はいよいよ収拾がつかなくなってしまった。やっぱり混ぜるな危険。これぜったい。
「おいおい。前回のパーティーでは俺がエマと最初のダンスを踊ったんだ。今日も俺が踊る」
そう言って出てきたのはレオンだった。
後から知った話だが、基本的に最初のダンスを踊るのは誰でもいいわけではなく許嫁や恋人など特別な相手と決まっているらしい。
そのため私が全員と順番に踊ると言えば、次はだれが1番に踊るかで揉め始めた。
「……これは成功だと思う?」
「どうかしらね……」
遠い目をした私たちは小さな声でボソボソと話していた。
クリスタルカレッジの学園長が挨拶をすると、パーティーが始まる。
彼らがたくさんの女の子たちに囲まれている間に、私たちはそそくさとその場を離れた。
さてさてどうしようか。
流石にこのままパーティーが終わるまで逃げきるのは無理だし……
アメリアは私を見捨ててご飯を食べに行ってしまったし、何とかならないかと会場を歩き回る。
「あ、レヴィ先輩!」
「あらエマじゃない。さっきぶりね。何か用?」
「先輩はパートナーいらっしゃいます?」
「何よ急に。居ないわ。ご存じないかもしれないけど、こう見えても私はプロの役者なの。スキャンダルなんてごめんだわ」
「じゃあ私と踊ってください!」
「アンタ話聞いてた?」
レヴィは呆れた表情で私を見る。
仕方ないじゃん。そこに居たんだから。レヴィなら立場もあるし、1回くらい踊っても面倒な事にはならないだろう。
「尊敬する監督と踊りたいんです。ダメですか?」
「なん……あぁなるほど」
何か言いたげなレヴィだったが、後ろの様子を見ると納得したような様子を見せる。
そして「仕方ないわね……」と、おもむろに手を差し出した。
「私と踊っていただけますか?マーメイドプリンセス」
流れるような動作で膝をつくレヴィ。髭も剃りスタイルもすっかり元に戻った今は、誰が見ても美しい好青年だ。その絵画のような美しさに、周りで見ていた令嬢たちは顔を赤くして見惚れていた。
「えぇ、喜んで」
私は彼の手を取りながら片脚を後ろに引いたカーテシーで応える。
いつの間にか私たちの前には道が出来ており、ホールの中央で皆に見られながら踊った。
周りからは「本当に人魚姫のような美しさね」「レヴィ様もお美しいわ」なんて賛辞が聞こえるが、言われ慣れているレヴィはともかく、私にはいささか居心地が悪く苦笑いで聞き流すしかなかった。
曲が終わるとさっきまで言い争っていた彼らに囲まれる。
どうやら言い争うのは止めて大人しく順番を決めたらしい。攻略対象はともかくどうしてレオンやリヴィエール兄弟まで踊りたいのかはよくわからなかったけど。
「レヴィ先輩と最初のダンスなんて度胸あるね。エマちゃん」
全員と踊り終わった後、アルバートは飲み物を持ってきてくれた。
ちなみに他のみんなはそれぞれご令嬢たちに囲まれている。アルバートは持ち前の軽薄さで上手く彼女らをあしらったらしい。
「だって最初のダンスは特別な人と踊るものなんでしょ?監督は私を変えてくれた特別な人だよ」
今私がここにこうして立っているのも、すべてあの時レヴィが声を掛けてきたから。
私はこの1ヶ月で私はたくさんの人と出会ったし、たくさんのことを教えてもらった。
「なるほどね。確かにそうかも」
「ふふっ」
こうしてパーティーは終わり、夜が明けると皆各々の学校へ帰っていく。
終わったのだ。
1週間、いや1ヶ月の努力の日々は終わった。
いつかこのことが私の助けになることを願って。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
なんと!次回で総合文化祭編が完結となります!!
長い長いお話でしたが、こうしてお付き合いくださった皆様には感謝しかありません。
次編こそは短く終わらせようと思っているのですが、既にストックとして書いている6話分で書きたいお話の半分も書けていません……流石に総合文化祭編よりは短くなると思いますが、正直自分が怖いです。ダラダラ書いているつもりはないのですが汗
次回で総合文化祭編完結と言うことでまた少しお休みを頂こうかそのまま続けるか悩んでおります。
ストックはあるのですが、物語の区切りということで休めるうちに休もう的なマインドです。そこは作者の気分次第かなと言う感じなので次回完結話のあとがきに連載予定については追記することにします。
私は言ってみれば自己満でこの作品を連載しているわけですが、やはり応援していただける声があると頑張らないとなとも思ったりします。正直一人孤独にキーボードを叩いて25万字程度の文字を羅列するのはしんどいです。と言う訳で皆様!何卒!何卒、はよ書けよ応援くらいはしてやるかというお気持ちの方は、ブクマ、評価、感想やレビューなどお待ちしておりますのでよろしくお願いいたします。
(ものすごく長いおねだりですみません)
最後にはなりましたが、これからも「ヒロインって案外楽じゃないですよ?」をよろしくお願いいたします。




