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来客……?

誰もいない図書室にメアリの声が響く。

この様子だと、よほど来たかったのだろう。

聞くとメアリの研究対象であるレピュタスについての本があり、ずっと読みたかったが禁書の棚に保管されているため読めなかったのだという。蔵書検索をかけると禁書の棚の本もヒットするが、かといって読むことはできないのでメアリは歯痒い思いをしていたらしい。


禁書と一口に言っても、禁術だけではなく国益にかかわる重要な本も多く所蔵されているため入りたいと思っている生徒は多い。ただ国の利益に関わることなので、国民ならともかく外国人の留学生が入るなど普通は不可能だ。レオンだってパワーサープレッションの件が無ければ到底許可などしてくれなかったはず。


3時間ほど図書館ですごしたのち、再び食堂へ戻ってランチを食べる。

午後は1コマだけ魔法解析学に出てから、ダンスのレッスンをするためボールルームへと向かった。


回数を重ねるにつれ、段々とヒールの扱いにも慣れ、目標であった3冊を乗せて歩けるようになった。次はいよいよダンスのステップの練習に入るということで、私も気合を入れてボールルームの扉を開く。


「よぉ。昨日ぶりか?」


「……え?」


部屋にいたのはアメリアとメアリ、そして黒髪青目のイケメン皇子、レオンだった。

ボールルームに差し込む光に照らされた彼は、まるで彫刻のようで私は一瞬言葉を失った。

というか、なんでここに?


「私が頼んだの」


アメリアが悪びれる様子もなく言う。

お、お前ー!!


「私たちの身長じゃ上手くリード出来ないし、誰かにお願いしようと思っていたところに偶然居合わせたのよ」


皇子(オレ)が練習に付き合ってやるんだ。感謝しろよ?」


感謝も何も、嫌なんですが。

どうせ嫌味な彼のことだ。足を踏もうものならグチグチ文句を言われるに違いない。

出来ればもう少し優しい人の方が……


「授業サボって付き合ってくれる人なんてそうそう居ないしさー。良かったね、エマ」


思わぬところでメアリにトドメを刺される。

確かにそうなんだけれども!

まぁ一応善意でやってくれてることだしなぁ。


「もっと手を上に……そうだ」


ビビりまくりのレッスンだったが、レオンの教え方は以外にも優しかった。

皇子ってだけあって黙っていればイケメンなんだよなぁ。


「もっと背筋伸ばして!」


横で見てるアメリアとメアリの方が怖いくらい。

いや、メアリよりアメリアか。


習ったばかりのステップをレオンの足を踏まないように気を付けながらなんとかこなす。

じっとしてれば楽だけど、そうもいかないのでレオンが移動するときはどうしてもステップが乱れる。色々と気を付けることが多すぎて、ゆっくりめの曲を1曲踊っただけで、私はもうヘトヘトだ。


「一回休憩ね」


アメリアにそう言われると、私はその場にへたり込んだ。

ヒールを履いてダンスするってこんなにしんどいんだ。

今なら交流パーティーの時の自分がどれだけお粗末なダンスをしていたか分かる。

ステップのスの字も無かったわアレ。




2週間もすると、ダンスがだいぶ形になってきた。

足元を見なくてもレオンの足を踏まなくなったし、3曲くらいなら連続で踊っても息が上がらなくなってきた。


日課になったレッスン後のティータイムでも背筋を伸ばして椅子に座り、足を揃えて静かに紅茶を飲むようになった。以前の私なら背もたれにもたれまくって、足も適当に放り出し、紅茶もズルズルを啜っていたに違いない。


「今日のターンは悪くなかった」


「え?ほんと?」


「あぁ、よく頑張ってる」


いつも嫌なことばかり言ってくるレオンに頭をポンとされると、それだけでなんだか照れてしまう。

くそ……なんか悔しい。


「イチャイチャしないでもらっていいー?」


「してないです!」


メアリのからかいに全力で首を振る。

私の反応を面白がってケラケラと笑うメアリを睨んでいると、アメリアがそう言えば……、と思い出したように言った。


「確か明日でしたよね?レピュタスの開花予定日」


「そう!そうなのよ!!」


さっきまでの表情が嘘のようにメアリの目が変わった。

レピュタスは夜に咲くから、明日は夜に錬金術出来ないかもな。

そう言えばどんな花が咲くんだろう。つぼみは透明だったけど、咲いたら色が付くのかな?


レピュタスの開花の観察をするため、明日はレッスン後に植物園に集合することになった。


ー---------------

今日もいつもと同じようにレッスンを受けるために着替えてボールルームへと向かう。

今日は流行の激しめのダンスの練習もするって聞いてるから頑張らないと。

最近社交界で流行している曲はアップテンポのものが多い。

それに従ってステップのスピードや移動やターンのスピードも速くなるため難易度はかなり高い。


しかし、今回のパーティーでも必ず1曲は流行の曲が選曲されるため練習しないわけにはいかない。

最近レオンの足踏まないようになってきたけど、これはまた踏みそう。

というか皇子の足踏みまくって大丈夫かな。傷害罪に問われない?

まぁ既に死ぬほど踏んでるから今更なんだけど。


まぁ何とかなるでしょ!

と自分を鼓舞し、気合を入れてドアを開けた。


「やぁエマ。久しぶりだね」


白い髪にルビーのような赤い瞳。太陽のように明るく爽やかな笑顔。

アメリアも驚いてる。

それもそうだよね。だって、ボールルームの中心でレオンの隣に立っているのは。


「セ、セドリックー--!?」



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