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交換留学……?

あの事件以降、メニューには注意書きが書き加えられたものの、滅多に気を付けるべき機会など無いので、相変わらずエドガー考案のウィーブルはカフェのドリンク人気ランキングナンバーワンを誇っていた。


客足も減るどころがむしろ増える一方だ。

バイトの日数を週3回から4回に増やしてもらおうかと考えていたところ、エドガーから呼び出された。ウィーブルの事務室ではなく生徒会室への呼び出しだったので、恐らくカフェ以外のことだろうと思ったが、せっかくなので私はついでに日数の相談もしてしまおうと思っていた。


「失礼します」


ノックをしてドアを開ける。久々に訪れた生徒会室は魔法競技大会の時に比べてだいぶ書類が減り、片付いているように見える。


椅子に座って作業しているエドガーの前まで行くと、何やらエドガーが暗い表情をしているように見えた。……なんだろう。すごく嫌な予感がする。


「いきなり呼び出してすみません」


「いえ、暇でしたので大丈夫です」


「ウィーブルの業績がかなり順調で父も喜んでいました。あなたのおかげです」


いつもはすぐに要件を伝えてくるエドガーが、中々本題に入らない。

もしかしたらウィーブルのことで呼び出したためこれが本題なのかもと思ったが、それならいつもの事務室で良いはずだ。


私は嫌な予感しかしなかったが、これ以上他愛無い話をしていても無駄だと判断して、要件は何なのかと尋ねた。すると、エドガーは1つ咳ばらいをして重たい口を開いた。


「エマさんは交換留学の制度について知っていますか?」


交換留学?

何処かの学校と生徒を交換で留学させるということだろうか。もちろん知ってはいるけど、ゲーム内でそんな話が出たことは無いし、この学校にそんな制度があるとは知らなかった。


「よりよい魔法教育のため、スターズでは毎年この時期に交換留学を実施しています。期間は1ヶ月。各学校から代表者を1名留学させます。行先は毎年変わりますが今年はウィンチェスターアカデミーの生徒はクリスタルカレッジへ、そしてその代わりライトフォレストアカデミーの生徒を留学生として受け入れることになっています」


なるほど、5校それぞれの学校から留学させたり受け入れたりするってことか。

この話を私にするってことは、まさか受け入れた生徒の面倒を見ろ的な?

落ち着いてはきたけど流石にそこまでの余裕はないんだよなぁ。


「留学する生徒は基本的に2・3年生の中から希望者を募り、レポートを通じた公募で決定します。今年もその公募を行っていたのですが……」


そう言った途端エドガーは「はぁ……」とため息をついて頭を抱えた。

……え?なんか問題でもあったの?希望者集まらないとか?


「実は、クリスタルカレッジの方からエマ・シャーロットに留学に来て欲しいと打診がありました」


は?名指し?なんで?

2・3年対象なんでしょ?そもそもなんで私なのよ、他にもっといるし。


「レオン皇子直々の申し出だそうです」


レオン皇子って、あの人だよね?

なんか呼ばれるようなことしたっけ……


『お前、クリスタルカレッジに来い。貴族主義の腐ったウィンチェスターにお前はもったいない』


あーなんか言ってたような気もする。

もしかして近いうちに会おうってそういう事だったの?

クリスタルカレッジすごかったし興味あるけど……


「お断りします」


私がそう言った途端、エドガーはまた頭を抱えた。

なんでもここまで話を持ってくるまでに、かなり彼は我儘を言ったらしい。

そもそも交換留学生を指名など前代未聞だと最初はウィンチェスターも断っていたらしいが、何があったのか最終的には私と予定していたの1人分の2人を受け入れることで話がまとまっているそう。


いやいや、まとめる前に私を通せよ。当事者なんですけど。

落ち着いてきたとはいえ、今の私は授業にバイトに研究に忙しいのだ。1ヶ月も留学している暇はない。


「学校同士で既に話が纏まってしまっているので、簡単には断れません。授業はもちろん免除ですし、学校から特別に支援金を出すそうです。ウィーブルも売れたメニューの代金はもちろん、入る予定だったシフト分の給料はお支払いします」


守銭奴のエドガーがそんなことを言うなんて珍しい。

……この人も相当苦労してるんだな。

仕方ない。断れる感じでもないし。


「1つだけ条件があります」


ー---------------

「エマ氏留学に駆り出されるってマジ?」


「駆り出されるって……ほんとですよ」


「しかもクリスタルに1ヶ月……」


「研究途中なのにすみません。研究は向こうで出来るようにお願いしたのでスマホで進捗状況報告しますね」


エイドの研究室に向かうと早速交換留学のことを聞かれた。

流石というか、ほんとに耳が早い。

折角順調だったのに穴を開けてしまって申し訳ないと伝えると、「それは全然大丈夫だけど、いつから行くの?」と聞かれた。

その一言に私は一気に暗い気分になる。


「えぇ!明後日から!?」


そう、流石に急すぎる。というか伝えるのが遅すぎる。

せめて1週間前くらいには教えてよ。


必要なデータだけもらって私は部屋に戻った。

必要な物は向こうで揃えてくれるらしいから、私が用意するのは最低限の荷物だけ。とはいえ、流石に色々必要なので明日は休みをもらって荷物のパッキングと街へ買い物に行く。お金は学校とエドガーからたっぷりもらってきたので1ヶ月は困らないだろう。


夕食の時にみんなに伝えると、皆はものすごく驚いていた。

そりゃそうだよね。


しかし、驚いたのは皆だけではない。

なんと公募で選ばれた交換留学生はメアリらしい。彼女はそういう事にやる気を出すタイプとは思えなかったが、なんでもクリスタルカレッジで栽培している希少な薬草を見たいらしい。

10年に1回しか咲かない花がちょうど咲くんだとか。

……私も見たいかも。


メアリは前もって準備をしていたため、明日も普通に授業に出席するという。

……普通はそうだよね。

でも、一緒に行く人が知り合いで良かった。2・3年生から選ぶと聞いて諦めていたが、この人たち優勝なんだった。


今回の事の元凶であるレオンと面識のあるセドリックやアルバートはとても不満そうだったが、私に断れる案件じゃなかったし仕方ない。せめて決めきる前に教えてほしかった。

まぁ条件も悪くないし別にいいっちゃいいんだけど。


ー---------------

一夜明けて、出発の前日。

準備のための休みをもらったので、朝から学校の馬車を出してもらい街に出かける。1人で街に出るのは初めてだけど、平日ということもあっていつもより人が少ない。


制服は向こうで用意してもらえるので、私服や下着などの衣類。洗顔料や化粧水といったケアグッズも予算があるのでちょっといいものを買った。一通りリストに書いていたものを買い終わると、既にお昼過ぎだったので、近くのカフェでランチを食べた。


チーズのたっぷり入ったホットサンドは絶品で、また次も来ようとひそかに思う。

その後は念願だった錬金術の材料を買いに行った。

ウィンチェスターは書籍は禁書のような扱いのものまで古今東西の本を読むことが出来るが、材料はそれに比べると豊富とは言えない。様々な本がある分、色々試したくなるが、学校に置いていなかったり、そもそもこの国では手に入らない材料であったりして歯がゆい思いをしていたのだ。


おそらくクリスタル帝国に行ってからも買うだろうが、ひとまず欲しかったのに学校に置いていなかった材料たちを購入した。

これで新しい錬成が出来る!


あれこれと街をめぐっているうちにすっかり陽が落ち、夕暮れ時になってしまった。

ヤバい、門限……というか夕食に遅れる。今日は絶対遅れるなって言われてるのに!

私は買い込んだ荷物を馬車に詰め込み、急いで学校へと戻った。

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