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映えスイーツ……?

学校にできるカフェで雇ってほしいと伝えると、エドガーはかなり驚いた様子だったが、私がお金に困っていることを伝えると納得してくれた。


初めのうちはエドガーが経営している別のカフェの従業員を働かせるらしい。段々と学生も雇っていくつもりだったという。私は生徒としては最初の従業員にしてくれるらしい。

仕事内容は主に接客や調理、普通の飲食店と変わらない。


「学校内に作るので恐らく赤字になることは無いでしょうが、今メニューに若干悩んでいまして……」


基本平日は外出できないので、お茶をするなど需要はしっかりあるだろうが、食堂で毎日一流シェフのビュッフェが振舞われることを考えると、フードの売り上げは見込めない。完全にスイーツのみにしてしまうか、ランチなども行うべきか悩んでいるのだと言う。


でも美味しいご飯がタダなのにわざわざカフェにまで行ってランチするかな?

それならお店は放課後のみの営業にして映えるスイーツとかドリンクの販売をした方が最終的な利潤は大きいと思うんだよね。


というかやっと私の専門分野の話なはずなのに、経済学って何の役にも立たなくない?

マクロ経済とかミクロ経済習ったけど、日本とか世界のお金の流れが分かるだけで別に経営するときに役に立つわけじゃない。経営学部行っとけばよかったのかな?よくわかんないけど。


「映える……って何です?」


え?この世界、インスタはあるのに映えは無いの?

聞いてみると、いいねがたくさん押されて拡散される、所謂バズりはあるらしいがそれはほとんど人や風景写真で、そもそも食べ物をマジグラに載せることはあまりないのだそう。


……なら、映えスイーツ流行るんじゃね?

流行は大体JKから生まれる。エドガーのカフェはウィンチェスターの敷地の中にあるが、休日は一般の客にも開放するという。私なら無理して考えなくても、日本で流行ったスイーツをパクっちゃえばいいし。


メニュー考案に協力するので、もしそれが売れたらバイト代にその売り上げの1割を上乗せしてください。

そう言うとエドガーは面白いと思ったのか二つ返事で了承した。

こっちは元バリバリのJK。大学生になった後だって流行にはもちろん敏感だし、お金がある分遠くのお店に行ったり暇さえあればインスタで調べた店のランチを食べに行ったりもした。


バイトだっておしゃれな人魚の某コーヒーチェーンで働いていたし、私以上に映えを知り尽くした人間はこっちの世界にいない。

売れる商品を作り出せれば働かなくてもかなりの収入源になるし。


一応エドガーを書面で契約を交わし、私は映えスイーツを考案するべくすぐに学校に戻った。


ー---------------

長いようで短い夏休みが終わり、今日から学校だ。

あちこちから気だるそうな声が聞こえる。

私の夏休みは、結局エドガーと買い物に行ったきりでそれ以外はずっと学校で、研究と手伝いと映えスイーツの考案。ちなみに私が考案した映えスイーツとドリンクは見事採用され今日オープンのカフェで実際にメニューとして並ぶ。


私のシフトは明日からなので、今日は客としてカフェに行くつもりだ。

研究はエイドの方が壁にぶち当たっているが、私は割と順調だ。研究の影響で毎日錬金術をしていたらすっかり錬金術にハマってしまった。えぇもうちょっとした時に新しいレシピを考えるくらいには。


基礎の理論に関しては授業でも扱っているし、ダミアン先生直々の指導によって叩き込まれたので、今私は新しい物質を作れないかと日々考えている。宝石でも鉱石でも何でもいいのだが、持続可能な魔力を持つ物質が欲しい。調べたところ、実在する宝石はあるものの自然と見つかったもので、作り方などは一切分からない。


つまり、自分で作るしかない。

先生に実習室のカギを貸してもらって授業が無い時間は使っていいと言ってくれた。

夏休みの間は錬金術しまくったし、今日からは授業が始まるからずっとは使えないけど放課後なら使える。私の錬金術用のノートにはたくさんのレシピが書かれている。


まだ成功と言ったものは出来ていないが、少しずつ完成形が見えてきたようにも感じる。

何より錬金術が楽しすぎてヤバい。もう一日中錬成してたいわ。


「エマ、久しぶり」


「セドリック、久しぶり」


午前の授業を終えて食堂に向かうとセドリックと会った。折角なので一緒に食べていると、続々とフラッグサバイバルの時のメンバーが集まって来る。気が付けば1年だけでなく2年まで、全員が同じテーブルで食事をしていた。大会は終わったけど、1ヶ月もみんなで食べていれば、中々クセが抜けない。別にわざわざ違うところで食べる必要もないので、私たちは各々の夏休みの様子についてワイワイと話した。


私がエドガーのカフェで働くことを伝えると、皆も働くと言い出したのには驚いたけど、私考案のメニューがあって今日1人でカフェに行くつもりだと言うと、色々あって皆で放課後にカフェに行くことになった。




放課後私たちはカフェに向かった。

学校の隅にある隠れ家的なカフェ。植物や木をモチーフにした内装で、格式高いと言うよりは親しみやすく落ち着く雰囲気だ。オープン初日にも関わらず、カフェの前には生徒たちが大行列を作っていた。


オーナーであるエドガーに頼まれているということもあって、その列には並ばず私たちはVIPルームへと案内された。店の奥にある個室、テラスのように開放的でありながら防音魔法が張られているため会議なども安心して行えるようになっている。


私たちは席に着くと、商品を片っ端から注文した。代金は経費で落ちるので問題ない。


「可愛い!これなに?」


「それに美味しそう」


「メアリ先輩のはメレンゲたっぷりフワフワのパンケーキ、ソフィア先輩のはフルーツ飴を乗せたパフェです」


どれも日本で流行っていたものをカフェ用に私が若干アレンジしたもの。

値段は気にしなくていいと言われたので、見た目だけでなく味にもかなりこだわっている。


今日これだけの人数を連れてきたのも宣伝のため。

マジグラをよく使うメアリやエリカはもちろん、セドリックやアルバート、アクアは女子人気が高くフォロワーが多い。エイドもこの年で教科書に載るほどの有名人だし、ソフィアやイザナやイデアだって学内ではかなり注目されている存在だ。


このメンバーがマジグラにここ、ウィーブルの写真を上げれば学内だけでなく学外の宣伝にもなる。

タピオカミルクティーやメロンソーダ、可愛いドーナツなど、各々が写真を撮りマジグラにアップする。もちろんカフェ・ウィーブルのハッシュタグをつけて。


私はそんな皆との写真をアップし、その場で絞るモンブランなどの動画をアップする。

一通り会話やスイーツを楽しんだ後確認すると、投稿にはかなりのいいねがついていた。

これでおそらく落とした経費分の仕事は出来ただろう。




次の日の放課後、私は授業が終わるとすぐにウィーブルへと向かった。

可愛いワンピースの制服に着替え、ホールに入る。次々と入る注文のオーダーを取っていくが、大半のメニューを自分が考えたということもあって、日本でバイトしていた時よりかなりスムーズに働くことが出来た。

……前のバイトなんかせっかくメニュー覚えても次々新作は出来るし呪文みたいなカスタムする客はいるしで、最初の1ヶ月はミスしてばっかりだったもんなぁ。


それにしても店は大繁盛だ。列が長すぎて整理券まで配るほど。

考えていた持ち帰りの提案をしてもいいかもしれない。

フルーツ飴は串に刺せば持ち歩けるし、タピオカだってそうだ。

何なら外で撮った方が映えるしね。


マジグラを見た客が大半なようで、私たちが投稿した映えスイーツの売れ行きは特に好調だ。

しかし、スイーツが甘いからか飲み物は以外にもハーブティーや紅茶が人気な印象。

確かにパンケーキとタピオカとか結構重いよね。


でも1番人気のドリンクが何の変哲もないエドガーの考えたハーブティーだと言うのはやっぱり気に食わない。私も甘くなくておしゃれな飲み物考えよ。


とはいえ週3日のバイトに考案したメニューの売り上げを加えればかなりの額になるだろう。

バイト代が入れば錬金術の材料が買える!

最近レシピを考えたはいいが材料が揃わないことが増えてきた。

学校にある材料は好きに使うことが出来るが、学校で使用しない材料や貴重なものは自分で買うしかない。


新しい材料が買えれば研究の幅も作れるものも増える!

それを楽しみに私はひたすらオーダーを取り続けた。

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