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お出掛け……?

気が付けばあっという間に夏休みも終わってしまう。

私の夏休みは、ダミアンの手伝い・錬金術・エイドの手伝い・勉強の4つで構成されていた。本当にこれしかやってない。すごいな私。こんなに遊んでないのなんて高校の受験期以来かも。


とはいえ遊びに行きたくとも、ここの土地勘など全くないし、セドリックやアルバートのように馬車を持っているわけでもないので簡単に学校の外には出られない。ダミアン先生のお手伝いでお金は貯まるのに使い道がないんだよなぁ。

学校の中では、食費や教材費、生活用品なんかもある程度は支給されていて、私の場合は国からお金が出ているので普段の生活でお金が必要になることは、まずない。


買い物とか行きたいなぁ、と思っていると珍しくエドガーが寮を歩いていた。

エドガーって大会が終わってから家に帰ったんじゃなかったっけ?早めに戻ってきたのかな。


すれ違いざまに無視をするわけにもいかないので、「お久しぶりです。エドガー先輩」なんて声を掛けてみると、エドガーはそれが分かっていたかのように返事をしてきた。どうして戻って来たのか尋ねると、やはり早めに戻ってきたのだそう。最後に見たときより顔色がいい。夏休みはしっかり休めたようで良かった。


「せっかくですし、お暇でしたらどこか出かけますか?」


そのまま雑談を繰り返していると、エドガーは私の状況を知っているかのようにそう言った。

エドガー、というか攻略対象と2人で出掛けるのは出来れば避けたいけど、エドガーとは特に関わっても恋愛には発展しなさそうだし、夏休みで学校にほとんど誰もいないこともあって了承した。


エドガーなら商家の息子だし、買い物に行くにしても色々場所を知っているに違いない。

教科書で扱う世界地図ならともかく、私はここ周辺のことを全くと言っていいほど知らないため一緒に来てくれると言うだけで正直すごくありがたい。


明日はちょうどエイドの研究室にはいかない日で、午前中のダミアン先生の手伝いさえ終わらせてしまえばその後はフリーだったため、明日の午後からと約束をして別れた。


ー---------------

「へぇ、ルイスと買い物……」


お前ら、なんだかんだ仲いいよなと言われて否定すると、前に出したレポート課題が評価されて学会で発表することになったと告げられた。学会で発表なんてすごいですね、なんて他人事のように軽く返すと、お前のレポートでもあるだろう?なんていわれる。


なんでもエドガーはレポート課題を連名で出していたらしい。

そう言えば最初頼まれる時にそんなこと言ってたかも。終わった時に、そんなことはしなくていいと言ったけれど、その願いは聞き入れてはもらえなかったようだ。


「その話をするために誘ったというのもあるかもしれないな」と先生が言うので、確かにわざわざ早めに帰って来るってことはそれを伝えたかったのかな、なんて思ってみる。自意識過剰かな?

「何にせよ」と先生は1歩下がって私の全身を見る。


「お前、まさかその格好で行く気じゃないだろうな」


顔をいがめた先生に、前にセドリックに買ってもらった服を着ると伝えた。

どういう服だと聞かれたので特徴を口で説明すると即座に「ダメだ」と却下される。

なんでよ、アレしか持ってないんですよ。


「買ってもらったのは春だろう。その生地や丈ではこの季節に着るには暑苦しい。制服よりは幾分かマシだが、それで外を歩くのはオススメしない」


そんなこと言われたってそれしか持ってないんだから仕方無いじゃないですか、と若干キレ気味に言うと、先生は「俺が用意してやる、今日のお駄賃だ」と言って笑った。

何度も言うけど先生の微笑みは色気がすごい。何回やっても慣れる気しないんだけど。


先生がくれたのは可愛い黄色のワンピース。向日葵で夏らしいデザインと色合いがすごくかわいい。

低めのパンプスやバッグ、アクセサリーまでもらった上に、服でも買ってこいとお小遣いまでもらってしまった。申し訳ない以前に公務員がそんなことしていいのかと思ったが、この世界はそこのところ緩いらしい。




次の日待ち合わせ場所に向かうと、エドガーは読書をして待っていた。イケメンは何をしても様になる。私が来たことに気づくと、彼はすぐにこちらに向かってきて待たせていた馬車へとエスコートしてくれる。やっぱりこの世界の人ってこうなんだな。


「エマさん、この間の生徒会の件ですが……」


馬車に乗っているとエドガーが話しかけてきた。

生徒会の件というのは、私がフラッグサバイバルで優勝すれば生徒会に迎え入れるという話だろう。実際私たちはフラッグサバイバルで優勝したわけだし、本当に生徒会に入れてくれるんだろうか?

正直あまり本気にしてなかったんだけど、エドガーって言ったことは守りそうだし。


「10月に生徒会選挙があります。もちろん僕が生徒会長になりますが、そうなった暁には君を生徒会役員として迎える予定です」


もちろん今すぐ生徒会役員にすることも出来ますが、手続きの都合上そちらの方が楽なのでそうさせてもらえませんか?と聞かれる。確実に生徒会役員になりたいのなら、今すぐにでも入れてもらうべきなんだろうけど今の状況でまた忙しくなるのは流石にしんどい。10月になれば研究も落ち着くだろうし。


「わかりました。よろしくお願いいたします」


エドガー以外に生徒会長なんていないでしょ。

これでまた魔法省に近づいた。

フフフ、よくやった私。偉いぞ、うんうん。


馬車を降りると、前セドリックと来たのとは違う繁華街だった。

一通り、服や生活用品を買いそろえると私はエドガーに連れられておしゃれなカフェに入った。


この世界にもスマホのような機械があり、インスタのようなマジグラというアプリが流行っているらしい。もちろん魔法の使える人にしか使うことはできないが、私もせっかくなのでスマホを購入した。元の世界とは違って自分の魔力を動力とするため、毎月通信料がかからないのがいい。


頼んだケーキを早速撮影する。マジグラのアカウントを作って投稿してみた。

フォロワーはエドガーしかいなかったはずだが、エドガーから辿ったのかすぐにセドリックやアルバートをはじめとするフラッグサバイバルのメンバーや先輩からもフォローが来た。


ホントにインスタみたい。映えスイーツとか映えスポットってこの世界にもあるんだろうか。

そんなことを考えているとエドガーから衝撃のセリフが聞こえた。


「実は今日ここに来たのは調査のためなんです。休み明けから学校内で学生を対象にしたカフェを建設予定なんでして。学生主導のカフェ、ウィンチェスターは貴族の子息令嬢が多いので働くという体験をさせるためでもあると言えばすぐに許可が下りてビックリしました」


ハハッ、と笑いながらも彼の目はちゃんと商人の目をしている。流石というか何と言うか、儲ける気満々だなコレ。……まって、学生主導?


「働くということは、学生にも賃金が出るということですか?」


「もちろんです。もっとも彼らにとっては微々たる金額ですから、社会経験の場でしかないでしょうが」


へぇー。学校内でバイトが出来る、ね。それも肉体労働ではなくおしゃれなカフェで、だ。

夏休みの間はダミアン先生のもとでバイトが出来るが、それが終われば収入源が無くなってしまう。

チャンスじゃん!


「エドガー先輩、そのカフェで働かせてください!」

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