表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/197

手伝い……?

「来たな」


「おはようございます」


「あぁ、おはよう。お前はあっちの温帯エリアの水やりを頼む」


渡されたじょうろを持って温帯エリアへ足を踏み入れる。

さっきの亜熱帯エリアよりこっちの方が過ごしやすい。咲いている花などもこちらの方が淡い色をしている。私は一つ一つ丁寧に水やりをしていく。知っているものはその通りに、知らないものは図鑑で調べてから水やりをする。正直面倒だが、きちんと時間や分量を守って管理しないと枯れてしまったり薬効が下がってしまうので仕方ない。


魔法薬はともかく植物は元の世界と結構一緒だ。この花たちがいったい何の役に立つのかは分からないけど、学校で見たことのある花もたくさんある。この辺は普通に水をあげても大丈夫だろう。書いてある名前も元の世界と同じだし。


「この花綺麗」


小さくて黄色い花。あんまり見覚えが無いけど何の花だろう。


「セント・ジョーンズ・ワートだ」


亜熱帯エリアの水やりを終えた先生がこちらにやってきた。図鑑を片手に水やりをしている私を見て「お前に任せて正解だった」と褒めてくれる。

それにしてもセント・ジョーンズ・ワートってどこかで聞き覚えがあるけど何だっけ?

……あぁ思い出した。ハーブだ。サークルの先輩がよく淹れてくれてたやつだ。


また飲みたいなぁと考えていると、先生が担当である魔法薬学と錬金術を教えてくれると言って実習室に連れてきてくれた。


「宿題のレポートは終わったのか?」


そう尋ねられて、「とっくに終わらせました!」と自信満々に答える私に先生はそうかと笑った。

あ、今馬鹿にされました?

親に自慢ずる子供のように見えたのかもしれないと一瞬恥ずかしくなったが、その気持ちは先生の一言によってかき消された。


「優秀な子羊には特別に錬金術の実践を俺自ら教えてやろう」


「え、ほんとですか!?」


錬金術は私がずっとやりたかった授業。しかし、ウィンチェスターでは1年生の間は座学のみ。

実習は2年生にならないと始まらない。錬金術はゼロから宝石や鉱石を作り出せる素晴らしい学問だ。教科書を見てこれほど心躍った教科はない。最初こそ苦手だったけれど、魔法薬学の知識が増えるにつれ、みるみる成績も上がってきた。


そんな錬金術をどうしてもやりたくて何度もダミアン先生にお願いしたけれど、聞き入れてはもらえなかった。……こんなにお金になること中々無いのに。

だから教えてもらえると知って嬉しくて仕方がない。

この世にない宝石とか作れちゃったらすごいじゃん。ノーベル賞的なのもらえたりして。


冗談はさておき、私が錬金術をやりたかったのはエイドとの研究にもしかすれば役立つかもしれないと思ったからだ。わざわざ電気や魔法を使わなくても、錬金術でジュラルミンが作れたりすればこれほど楽なことはない。


錬金術を行うには特殊な釜が必要で、一般ではまず流通していないためどうしても学校の授業を待つしかなかった。その後自習だなんだと言ってやろうと考えていたが運がいい。めっちゃグットタイミングですよ先生。


「ちょうどいい、まずはレポート課題のエメラルドの生成をやってみるか。基本だしな」


先生はそう言うと杖を一振りして材料を机の上に並べた。

……こういうときに思うけど魔法って便利だな。


私は先生にサポートしてもらいながらレポートに記した通りの手順で作業を進めていく。

この材料たちからエメラルドが出来るって不思議でしかない。これが魔法の薬草や材料でなければ日本ではきっと大儲け出来ただろう。


エメラルドの生成は基礎中の基礎でもあるので本当にすぐに終わった。

「ではまた明日」と先生は教室を去っていくと同時に今日のお駄賃として私からすればかなり高額なお金を置いていった。これから毎日錬金術の実践をさせてくれると言うし、作ったものはくれるし。そもそも手伝いの内容も私の勉強になることばかりだし、挙句の果てにはこんな金額のお駄賃までくれる。

何この神バイト。流石に待遇が良すぎて怖いわ。


片付けもほとんど先生がしてくれて、私は少しものをしまっただけ。

時計を見るとそろそろエイドの研究室に行く時間だったので、私はそのまま研究室へと向かう。


「エマ氏、昨日話してた材料だけど……」


そう話すエイドの机には、私が指示した材料が並んでいた。

すごい、あれをたった1日で?

早速やりましょうと言ってお互いテキパキと準備を済ませる。


結論から言うと実験は成功した。電気は作ることが出来た。

ただ問題はその電力がかなり弱いことと、車に取り付けるような機械と充電器が必要という事。

そもそも元の世界ですら、まだ電気自動車は普及していない。もちろん私が作り方を知るはずもないし、なによりあれを普及させるには至る所に充電所?的なものが必要だ。


この世界の技術力ではそれほどの電力を生み出すのは不可能に近いだろう。

だがこの世界でも化学がしっかり通用すると言うことは、やはりやりようによっては合金も可能ということだ。最悪錬金術で何とかしようと思っていたが、それをすると多分コストがかかる。完成はできても実用化に程遠い機械ではエイドも十分には納得しないだろう。


今の状況を踏まえ、私たちはもう一度材料などを1から見直した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ