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試合本番……?

「ヤバい。緊張してきたかも……」


「何言ってるのよエリカー。ほとんどの注目は私たちの方に向いてるから大丈夫よ」


「……何だろう、フォローなんだけど凄くムカつく」


メアリの言葉にエリカがボソッと呟いたのが聞こえた。

試合前、控室に先輩たちが来てくれていた。とは言っても先輩たちもほぼ同じ時間に試合なのですぐに出て言ってしまったけど。


団体戦は同じ競技の新人戦と本戦を同じ時間に行う。つまり先輩たちは私たちの試合を見られないし、私たちも先輩たちの試合を見ることが出来ない。どうせ2種目しかないんだからゆっくりやろうよと思うが、なんでも試合が終わるとすぐに閉会式をして個人戦、団体戦の表彰式と学校対抗の新人戦、本戦、総合優勝の発表と表彰があり、夜には5校の選手の交流パーティーも開催されるため、その会場の準備などの兼ね合いで結構時間に余裕がないらしい。


交流パーティーは優勝校をモチーフにした装飾がされるそうで、発表が終わってからでないと準備できないんだとか。そんなことしなきゃいいのに。大会委員の人大変だな。


「そろそろ入場です。準備お願いします」


大会委員の人が呼びに来たので、全員で競技場へと向かった。

会場に入るとすごい歓声に包まれる。何がほとんどの注目は私たちに向いてるだよめっちゃ人いるじゃねぇか。


そもそも団体戦の会場は特殊で、大きなドーム型になっている。試合はもちろんその中で行われるのだが、競技の内容上歓声が聞こえるのはマズいので、競技中は防音と中から外が見えないように設定された結界内で行われる。観客側からは見えるので、観客は目視と映像魔法によって撮影された競技場内の様子を大きなスクリーンで鑑賞することとなる。


つまり、私たちの知らないところで歓声や罵倒が飛び交っているであろうということ。

知らないところで見られてるのってなんか怖い。


そんなことを思っている間に会場が魔法によって構築されていく。見慣れた森。練習していた地形と全く一緒なので当然なんだけど。静かになったなと思うと結界も張られていた。


『各自スタート位置に移動してください』


「よし、向かうぞ!」


試合前に全速力で疾走しているイザナを遠目に、他の3人と一緒に歩いてスタート位置へ向かった。

向かう途中に他のチームと出会うことは無かったが、私たちはスタート位置が遠かったこともあり、スタート位置に着いた瞬間アナウンスが流れた。


『全チームの移動が完了しました。1分後に試合を開始します』


私も緊張してきた。……頑張らないと。


「皆、作戦通りに。何かあったらインカムで。指示は僕が出す。……大丈夫、僕たちは絶対負けない」


セドリックがあまりにも自信満々な様子で言うので、少し気持ちが楽になった。

アルバートも持ち前のチャラさで場を和ましてくれる。


「絶対優勝するぞ!」


「「おー!」」


イザナの掛け声にみんなで応える。なんかほんとに試合前の部活みたい。


『これより新人戦団体、フラッグサバイバルを開始します。試合開始まで、3・2・1』


ピー!という合図と共に全員動き出す、わけではない。


「エリカ」


「もうやってるわ。やっぱりね……アルバート、ローズブレイドとライトフォレストのアタッカーが仲良くこっちに向かってきてる。場所はdの7」


「了解」


ー---------------

「難易度の高い魔法を覚える?」


「そう、エマは既にやってるけど、ノエルがいる以上それもどこまで通用するか分からない。別にむやみに難しい魔法をやれっていう訳じゃないよ。勝つために必要な魔法を4つピックアップした。難易度はバラバラだけど、異次元に難しいものじゃない。ここにいるメンバーならできると思ってる」


「そういう事なら俺は構わないけど?」


「俺もだ!」


「私も」


「ありがとう。じゃあ……」


ー---------------

毎年の恒例行事、ウィンチェスター潰し。

優勝候補であるウィンチェスターアカデミーを全員が揃っている間に少しでも戦力を削ごうという作戦。開始と同時に各校のアタッカーが協力してウィンチェスターを潰す。これは実際かなり有効なので、行われなかった年はないと言っても過言ではない。


「状況から見るに、多分カーライルは裏切る」


あそこは狡猾な作戦で優勝を狙ってくる。今年の配置と個人戦の結果から察するに、協力するフリをしてクリスタルのアタッカーに近づき、不意打ちでそのままクリスタルを潰しにかかるだろう。


「凄い。セドリックの言った通り、クリスタルとカーライルが交戦し始めたみたい。場所はeの5」


「レオン皇子ももう動いてるはず。恐らくノエルも想定していただろうし油断はしないで」


セドリックがエリカに要求したのは、会場の人間の配置を視る魔法。個人の特定まで可能だ。本来とても高度なものだが、視る人数を1度に2人、場所は会場を54個に分け横にaからf、縦に1から9の座標で視ることによって難易度を下げている。ちなみにこれはセドリックのオリジナルを改良したもの。

……多分エイドが酷使されている。


「……どうだ?エリカ」


「ナイスアルバート。ローズブレイドとライトフォレスト、上手いこと潰し合ってる」


アルバートには相手に幻覚を見せる魔法。彼がパデルテニスで使用したものを応用していて、個人ではなく空間全体に幻覚を見せる結界を張っているのに近い。エリカの座標を54個に分けたのは、それがアルバートの張れる結界の限界のサイズだったから。

結界内では、自分以外の人間が全てウィンチェスターの誰かに見えるようになっている。

つまり、他のチームの敵だけでなく味方すらもウィンチェスターの誰かに見えてしまう。


「エリカ、クリスタルはどう?」


「カーライルと交戦していたアタッカーは2人とも脱落せず、そのままカーライルを潰しに行ったみたい。その他の3人はまだ旗の周りで様子を窺ってる」


恐らくこのままいくと、カーライルアカデミーは旗を取られるか全員脱落させられるかで負けてくれる。


「ローズブレイドからフラッガーとガードの1人が結界内に入ったわ……ライトフォレストからもフラッガーが1人」


「ビンゴだね」


インカムがあるから、各選手は自分の状況を味方に伝えることが出来る。同じ場所にいる味方でも話が嚙み合わないこの異常な状況を察して応援が来るはず。アルバートの結界は目に見えない、つまりこちらが呼ばずとも勝手に罠にはまって潰し合ってくれる。


「そろそろ始めよう。エマ」


セドリックに頷くと、私は箒に乗った。ガードであるイザナによろしくと言って、私は飛び立つ。

迷うことなくクリスタルカレッジの方角へと向かうと、すぐに赤と黄色の煙が上がる。これはそのチームが脱落したことを表す。赤はローズブレイド、黄色はライトフォレストを意味している。


『エマ、僕たちもそっちに向かうよ』


セドリックがインカムからそう言った。今旗を取ったのはアルバートとセドリックだ。2人は相手の最大限の戦力を削いで最小限の力で旗を取った。すぐに緑の煙も上がる。緑はカーライルアカデミーの色。おそらくクリスタルカレッジが脱落させた。


ガードであるエリカからクリスタルのフラッガーとアタッカーが3人でこちらに向かってきていると連絡が入る。恐らくクリスタルもまだ脱落者はゼロだろう。


『エリカ、アルバートを送る。3分耐えて欲しい』


『了解』


私がクリスタルの旗の近くに着くと、すぐにセドリックがやってきた。旗を守るガードの1人には、魔力の流れが見えるノエルがいる。しかし、アルバートを送ったとはいえ向こうにはレオンとヨハンがいるため慎重に戦っている暇はない。


「おかしいな。君たちの魔力が全然見えない」


「見えないようにしているからね」


セドリックが習得したのは私たち全員の魔力の流れを見えなくする魔法。実際にはその逆で魔力以外の流れも視認するような魔法をかけており。ノエルからすれば見えすぎてどれが魔力の流れかが分からないはずだ。


「無駄な努力ご苦労様。本当はアルバートも連れてきてほしかったけど、本命の2人がいてくれて嬉しいよ」


次の瞬間、私とセドリックは魔法は避けたものの、その風圧に一気に吹き飛ばされ旗から遠ざけられた。


「ウィンチェスターは確かにすごい。でも、君たち2人さえ脱落させれば僕たちの勝ちは堅い」


なんでここにレオンとヨハンがいるの。

2人は旗に向かったはずじゃ……


「お前らに魔法を当てるのは俺がやりたかったんでな。向かうふりをして引き返してきた」


「3人相手に勝ち目はない。チェックメイトだな」


風圧で杖から手を放してしまった私たちは丸腰だ。3人も勝ちを確信した。

その時。


「は?……なんで」


クリスタルカレッジを表す黒色の煙が宙を彩り、同時に試合終了の笛が鳴った。

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