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地獄の特訓……?

いつもより静かな学校。今は生徒も先生もほとんどいない。

しかし、演習場αでだけは私たちの悲痛な叫びが響いていた。


「キッツ!ウォーミングアップからランニング10キロって頭おかしいんじゃない!?」


「ほう?元気が有り余っているようだな、カーソン?……お前には特別にプラス5キロだ」


はぁー!?と文句を言いながらもエリカはダミアン先生の圧に負けて渋々走り出した。イザナは「お前だけずるいぞ!俺も走る!」と言ってエリカの後を追いかけた。バケモンかアレ。


「エリカも馬鹿だなぁ。ダミアンはあーいうタイプじゃん」


セドリックと共にケラケラと笑っているアルバートがやってきた。

後ろには短い鞭のようなものを持った人が見える。……ご愁傷様。


「馬鹿はお前も同じだバートン。7キロ追加」


そう言ってペシンとアルバートの頭を叩いた。

教師が鞭なんて持ってていいの?

ていうかその人結構な貴族だけど大丈夫かな?後で訴えられない?

とはいえそんなことを口にすれば私も巻き添えを食らいそうなので黙っておく。


「……えーっと。先輩たちはそろそろ予選が始まった頃だね」


セドリックがアルバートを見送りながらそう言った。

たしか最初の競技は女子のフィジカルダービーだったはず。メアリはもう試合終わったのだろうか。

まぁ黄金世代って言われてる筆頭の人たちなわけだし流石に大丈夫だと思うけど。


「お前たちは魔法の練習だ。それぞれ使用する魔法を発動しろ。10分間発動し続け1分休憩。休憩の後さらに範囲を広げまた10分、これを繰り返す」


制御できなくなったら俺が力づくで止めてやるから安心しろ、と言われても何も安心できない。それって止められた後の自分生きてますか?

まぁ私は使う魔法まだ完全にコントロール出来てないし、それに加えて魔法を使うことになったから仕方ないんだけど。みんなもセドリックの新しい作戦の影響で使う魔法に大幅に変更があったから、厳しいのは覚悟してた。

……でも私、まだ死にたくないよー。


「お前らはどこまで耐えられるんだろうな?ちなみに死にかけたら、俺と摸擬試合始めるから……楽しみにしとけよ?」


はい大問題教師ー。生徒の苦痛を楽しむな。大人の色気を撒き散らすな。

てか先生ここのOBじゃなかったっけ?いい子のボンボンじゃないでしょどう考えても。



「冗談抜きで死ぬかと思ったぜ……」


「そうか?俺まだ物足りないから校舎周り走ってくるわ!」


「マジあいつ何なの?バケモノ?」


多分そうだと思うわ。朝から始めて、解放されたのは夕方。というかもう夜。

疲れすぎて食事をとる気にもなれないし、ホテルに戻る気力すらなかったのでこの日は寮で眠ることにした。


寮に戻ると、私たち以外にはほとんどいないので、いつもの賑やかな談話室も静まり返ってなんだか気味が悪い。最低限のお風呂や着替え、歯磨きやマッサージだけ。足がつるとしんどいのでコップ1杯の水を飲んでから、私はベットに沈んだ。


ー--------------

窓から漏れる光が眩しい。

時計を見ると、短い針が7を指していた。……もう朝か。

練習は10時からだと聞いているのでそろそろ起きないとまずい。


全く疲れが取れていない体を起こして起き上がる。

洗面台へ向かうため立ち上がると脚や腕と言った様々なところが痛い。筋肉痛かな。

練習用の魔力感知スーツに着替えるとさらに気が重くなる。

……そう言えば先輩たちの昨日の結果聞いてないや。


朝食をとるため大食堂へ向かうと、先に来ていたセドリックとエリカが朝食を食べていた。

2人におはようと言って席に座ると、すぐ後ろからアルバートとイザナがやってきた。

皆明るく振る舞ってはいるがやはりみんな昨日の疲れが残っているらしい。イザナ以外はどことなく暗い顔をしている。


どうせ朝くらいしかまともに食べられないので、結構ガッツリ食べてやった。

胃もたれしないといいな、なんて今更思いながら演習場に向かう。


「おはよう。今日は仮想の試合相手と実際の試合形式に近い形での摸擬戦を行う。が、その前に……ウォーミングアップだ。10キロ走ってこい」


はい鬼。てか先生昨日より肌ツヤツヤしてない?

私たちが苦しむのを見てそんなに嬉しいか。

先生なんて、今日のお風呂上がりに一生髪乾かなきゃいいのに。と心の中で呪いをかけながら、10キロを走る。スピードは指定されていないのでゆっくりジョギング程度。イザナは爆走していったけど。


走り終わって演習場へ戻ると、既に演習場は試合のフィールドに変わっていた。今年のフィールドは森。このフィールドは毎年変わるが、大会前に事前に細かい地形なども開示されるため、このフィールドは試合の物と全く同じだ。木々が生い茂っていて、坂があったり足場の悪い場所もある。

去年の砂漠のフィールドと違ってかなり入り組んでいるので、開始地点から相手の旗を目視することはできない。


「帰って来たな。5分後に始めるぞ」


先生がそう言うと、マネキンのようなものが続々と出現する。

これが所謂仮想の練習相手だ。団体戦は各校代表1チームのみが出場するので、個人戦のように予選は無い。だから試合は1発勝負。勝てばすぐに優勝となる。

同時に5チーム25人が同じフィールドで試合をする。

役割が決まってはいるが、それに縛られる必要はない。アタッカーが旗を守ってもいいし、ガードが相手の旗を取ってもいい。つまり、ガードは常に20人の敵から旗を守らなければならない。


私たちの戦略がどこまで通用するか。

相手の戦力をいかに見抜き、利用できるかが問われている。


「始め!」


勝ったことには勝った。けれど所詮は偽物。意思があるわけでもないし、やはり動きが単純だ。

けれど相手の人数を身をもって再確認できたのは良かった。

きっと先生もそのつもりでやったんだろうし。


その後は上手くいかなかったことと改善点を話し合って、先生がくれた出場選手の予選の映像を見てマークすべき選手と対処法、誰が対処するかを決めた。試合中はインカムのようなもので味方と連絡を取ることが出来るので、当日はセドリックが全体の指示を出すことになった。


昨日に比べれば軽めの練習だったので、皆でホテルに戻ろうという話になった。

……それでもだいぶキツイ練習だったけど。

ホテルに戻ると、既に夕食の時間だったようで、私たちは急いで夕食会場へと向かった。


私たちが戻ってくるのを知っていたかのように先輩たちは10人掛けのテーブルに座って待っていた。


「やっぱり帰って来たー。お疲れー」


ボロボロじゃんとメアリが笑う。「急がないと夕食の時間終わりますぞ」とエイドに言われ、私たちは夕食を取りに行ったが、戻ってくると先輩たちは明日の試合見に来てねと嬉しそうに微笑んでいる。


「予選通ったんですか!?おめでとうございます!」


「当たり前でしょ。ここにいる全員、出場種目すべてで予選突破したわ。というか、本戦はほぼほぼ予選突破してるわよ?」


やっば。流石黄金世代。私たち来年大丈夫かな。先輩たちに比べて全然じゃね?とか言われそう。


エドガーももちろん予選突破したようで、おめでとうと伝えるとすました顔で「あぁ、ありがとうございます」と言われた。反応が薄くないかと聞くと、新人戦の結果を取り返せたことへの安堵しかないんですと言われた。そして、新人戦でも優勝するためにフラッグサバイバル優勝してくださいとも。

団体戦は個人戦に比べて配点が大きいので1つの競技で優勝するだけでもかなりの点数が入る。しかしそれは他のチームも同じことで……分かってる。分かってるけど、あんまプレッシャーかけないで。


でも、やっぱり負けるわけにはいかないよね。

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