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強敵……?

その後、アルバートたちと合流して私たちは少し早いがファーストポイントの会場に来ていた。

イザナのパデルテニスも無事予選を突破したようで、本人は当然だと言っていたが終始顔がにやけていてやっぱり嬉しいんじゃんと思ったことは本人の名誉のために黙っておく。


「アルバート大丈夫かなぁ」


「メアリ先輩がそんなこと言うなんて珍しいですね?」


会場へ着くと、アルバートはすぐに選手の控室に向かった。その時も特に緊張した様子はなく「1位取って来るわー」とどちらかというと余裕そうに見えたけれど。


「凄いヤツがいるのよ。昨日のウィザードシューティングにも出てたわ。セドリックとは違う試合だったけど、彼も予選を1位突破してる」


なんでも他を寄せ付けない圧倒的な点数で突破したのだという。


「ヨハン・リヴィエール。クリスタルカレッジの1年生で王国の公爵家の出。出場種目はウィザードシューティングとファーストポイント。双子の兄のノエル・リヴィエールはパデルテニスに出場しアルバートと同じく予選突破。魔法が得意なヨハンと頭脳派のノエル、二人はレオン皇子の腹心って言われてるしね。……実際は悪友だと思うけど」


やけに詳しいセドリックに理由を聞くと、隣国の公爵家ということもあって昔から顔見知りらしい。

しかもサラッと「そう言えばウィザードシューティングで会った時に3人ともフラッグサバイバルに出るって言ってたよ」と言った。それヤバいじゃんサラッと言う事じゃないから!


ちなみに隣国レオン王子はクリスタル帝国の第1皇子で、個人種目ではウィザードシューティングとパワーサープレッションに出場し、どちらとも予選突破を果たしたという。……セドリック大丈夫?中々手ごわそうだけど。


しかもなんと、ノエルは死ぬほど目がいいらしい。何でもその人の魔力が目に見えるのだとか。

それを聞いた私たちは焦った。おい、セドリック。どうしてそれを黙ってた。

……私たちの作戦丸つぶれじゃん。何とかしないと。

アクア、良かったね。さっきのフラグ、無事回収だよ。


何か考えないと。何かいい感じの魔法無かったっけ?この試合が終わったらエイドもたたき起こして……なんて考えているうちに第1試合の選手が出てきた。全然見てなかったけど、ウィンチェスターアカデミーの生徒が2位で予選突破したらしい。その後すぐに第2試合が始まり、気が付けばアルバートが出場する第3試合が始まっていた。


「エマ、あれだよ。あれがヨハン・リヴィエール」


セドリックが指す方を見ると、そこには灰色のマッシュヘアの高身長な男がいた。

……うわ美人。なんかマフィアばりの風格あるけど。


『ラウンド1。レディ』


全員が杖を構える。会場には緊張感が走り、いつもフラフラしているアルバートですら真剣な表情をしているのに、ヨハンという男だけは杖を握った腕を下ろしひたすら手櫛で風で乱れた髪を戻している。


合図と共にランダムに的が光る。最初に的に当てたのはヨハンだ。その次がアルバート。

その後もヨハンとアルバートは接戦を続け、15ラウンドでは同点となっていた。2人の予選突破は堅いだろう。

両者譲らぬ白熱した試合。すごい。すごいんだけど……

合間さえあればずっと鏡を見ているヨハン。それどころが試合中にも関わらず鏡の中の自分にうっとりしている。もしかしなくてもあれは……


「ヨハンは自分の顔が大好きなんだ。同じ顔のノエルはそうでもないみたいだけど」


私知ってるよ、ナルシストのナルちゃんってことだよね?

そう思った瞬間ヨハンはこっちを見た。

……え?いまもしかしなくても睨まれたよね?心読めるの?てかガラ悪。


結局1位はヨハンで2位はアルバートだった。

今日の試合は全て終了したので、私たちはホテルに戻った。アルバートはすごく悔しそうだったけど、予選突破出来ただけでも十分すごいよ。

夕食の時間になると、部屋で寝ていたエイドも夕食会場に現れた。

夕食はビュッフェ形式で10人掛けの大きなテーブルに座ると、既に食事を取りに行った何人かが食べ始めていた。


私も食事を取りに行こうと皿を持って席を立つ。

団体戦のことも話したいしさっさと取って席戻ろ。ポテトばっかり取っているエイドを置いて、私はサラダのコーナーへと向かった。


最近また不規則な生活になってるし、食べ物くらいは気を使わないと。

体調不良で出られないとか笑えない。それでなくても太るし。


「お前、俺に惚れてんのか?」


振り向くとヨハンが立っていた。……は?何言ってんだこいつ。

「まぁ俺はイケメンだし惚れるのも仕方ないけど?」なんて1人で何か言ってるが無視しよう。


「おい!無視するなよ!」


「……あ、私に言ってます?」


「お前以外に誰がいるんだよ!」


まぁ確かに私以外に人いないけど。トレーの上には山盛りのサラダとスムージーが乗せられている。

流石ナルシスト。美意識は高いんだ。


「お前、今日の試合で俺の事ずっと見てただろ」


そりゃ観戦してるんだから選手の方を見るでしょうよ。自意識過剰か?

やばいめっちゃめんどくさい。さっさとサラダ取って席戻ろ。


「ヨハン。まだサラダばっかりか?逆に栄養偏るそ」


「うるせーよノエル。俺は今この子と話してんの」


うっわ、同じ顔。というか今日クリスタルカレッジと夕食の時間一緒なんだ。

結構クリスタルカレッジが全競技予選突破してること悔しがってる人多いからなんか揉めそう。


「他校の生徒に迷惑をかけるなよ……って、エマ・シャーロット」


「なにノエル知ってんの?」


「今日のウィザードシューティングで1位通過した生徒だ。魔力の流れに驚くほど無駄が無かったのを覚えてるよ」


あれほど広範囲の魔法を正確に使うのには驚いたよ、と微笑まれる。まさか名前覚えられてるとは。

それにしても、やっぱり魔力が見えるってほんとなんだ。これが相手チームにいるとかなり厄介……


「お前ら食事一つ持ってくるのにどんだけ時間かかってんだよ」


やばいなんか怖い人出てきた。

てゆうか高身長3人に囲まれてるこの絵面、完全にカツアゲじゃね?威圧感すごいし、クリスタルカレッジの黒い軍服みたいな制服カッコいいけどこの人達に着せちゃダメでしょ。


クリスタル帝国はアスカニア王国と違って未だに他国との戦争が絶えない軍事国家。元々強い国だけど、最近は魔法の技術も向上していると聞いた。アスカニア王国とは友好条約を結んでいるけど、敵に回しちゃダメな国っていうのは皆が持ってる共通認識だ。


「悪いレオン」


黒髪にルビーのように赤い目。しっかりとした体格。

すっごいイケメン。いや、双子も相当なんだけど。……ん?


「レオンってまさか……」


「あ?俺はレオン・ベネディクト。クリスタル帝国の第1皇子だ。お前はウィザードシューティングの……アスカニア王国の貴族は大体覚えてるが、シャーロットは聞いたことが無い。他国の出身か?」


やっぱそうじゃん。流石に皇子に声かけられて逃げるのは国際問題なっちゃう?

とりあえず私が貴族ではなく平民だということを伝えると3人は驚いたように目を見開いた。


「へぇ?ウィンチェスターはいい子のボンボンばかりでつまらないと思っていたが、面白い」


レオンが手で私の顎をクイっと引きながら顔を近づける。近い近い!


「お久しぶりです。レオン皇子」


「……セドリックじゃねぇか」


「ヨハンとノエルも久しぶりー。お前ら全然変わらねぇな?」


突如現れたセドリックとアルバート。

さっきまで黙っていた周りも、いよいよ何事だとざわつき始めた。

ヨハンは「出たよ、いい子のボンボン」と言っているが、私からすればいい子かはともかくアンタら全員ボンボンなんだよなぁ。


「俺ら明日も試合なんでこれで」


アルバートに引かれて席に戻ろうとすると、後ろから「待てよ」と声がかかる。


「お前ら2人と一緒ってことはお前もフラッグサバイバルに出場するんだろ?エマ・シャーロット。俺らも出場するんだ。ポジションはヨハンがアタッカー、ノエルがガード、俺がフラッガー。お前がどのポジションかは知らないが、楽しみにしてるぜ?」


どうしよう。フラッガー辞めたい。

セドリックとアルバートにどうして食事を取りに行くだけで、よりによってあの3人に話しかけられるんだと聞かれたけど、そんなのこっちが聞きたいよ。


「2人共明日の本戦、絶対勝ってね」


何故か2人がいきなり練習するとか言い出したが、団体戦の話をするため、私は「早く行くよ」と2人を引っ張った。

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