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被害者

「えーっと……どっちが被害者なんだ?」


勢いよく入ってきた彼らの中で最初に口を開いたのはレオンだった。彼は驚きと呆れを含んだ苦笑いでこちらを見る。


「そんなの明らかじゃないですか」


「明らかだって言うなら犯人はお前だぞ」


拘束され身動きが取れない2人と、その目の前に没収した刃物を持って立つ私。

……確かに。

後ろで見ていたアルバート達はもう我慢できないと言った様子で吹き出した。そんなに笑わなくても。


あ、まって。チェイスってこの国の第二皇子なんだよね。

このままじゃ私不敬罪に問われる?

私はしれっと杖を振って拘束魔法を解いた。しかし、彼らにはもう戦闘の意思はないのか特に暴れる様子はない。


「エマ大丈夫!?」


「ありがとうセドリック」


「……で、久しぶりだなチェイス」


私が他の人と話している間に、レオンは彼らの方へズンズン歩いて行った。


「レオン……」


「おいおい。もうお兄様とは呼んでくれないのか?」


レオンにとっては煽りは標準装備なのだが、やはりチェイスはそれが鼻に着くようで彼のことを憎らしそうに睨んでいた。

折角いい感じだったのにあんまり刺激しないでよ。


「皇帝の婚約者を誘拐した罪は重いぞ?」


「何が皇帝だよ……俺の方がずっと上手くやれるのに」


「そうかもな。だが、皇帝は俺だ。これは紛れもない事実でお前じゃない」


「……」


チェイスが俯いて黙り込む。地下に嫌な沈黙が走る。

空気を読むことに長けているエドガーやアルバートが異変に気付いたときにはもう遅かった。


「……エリック」


「はい」


チェイスは隣にいた彼の名を呼ぶと、彼はいつの間にか没収したはずの杖を持って転送魔法を唱えた。


『……父様!』


私は妨害魔法を唱えようとするが、遠くで聞こえたリーシェの声に気を取られ展開が遅れる。

気が付いたときにはチェイスの手に金色に輝く杖のようなものが握られていた。

そこにいた全員、それがいにしえのレガリアであるセプターだと気づくのに時間はかからなかった。


「どうにか落ち着かせないと」


アメリアが珍しく焦った様子でそう言った。

しかし、時すでに遅し。


「お前ら全員、殺してやる!!!」


もう彼は完全に冷静さを失っている。

そもそもレガリアの魔力は強大すぎて、使用者にも相当の負荷がかかる。非魔法師ならなおさら自分のキャパ以上の魔力に耐えきれず死んでしまう危険性が高い。それだけでなく、元々魔法が使えない人間がいきなり強大な魔力を手にコントロールできるはずがない。

つまり、何が起こるか分からないと言う事。このままでは本当に危ない。


「ちょっと、落ち着いて!」


大きな声を出すが、彼には届かない。おそらく既に強大な魔力によって彼自身の意識は失われてしまっている。

彼が力いっぱいセプターを振り回すと、レオン目掛けて魔法が発動される。

当たれば死ぬ。直感的に誰もがそう思った。


「……レオン!」


あれ?どうして私、

気が付くと私はレオンに被さっていた。


「エマ!」


周りから聞こえる私を呼ぶ声がどんどん遠くなって、私の意識は闇の中へと誘われていった。

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