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バートレット侯爵邸

「死ぬかと思った……」


「やっぱり魔法をかけているとはいえ海の中じゃ思うようには動けないわね」


何とか城内から脱出すると、既に城は一部崩壊しており本当に危なかったんだなと再認識する。今のところ崩れたのはほんの一部で全壊には至っていないが、恐らくこのまま放っておけば遠くない未来にこの都市は失われてしまうだろう。


「これって国宝認定とかされてないよね?」


もしかして私たち、世界遺産壊した犯罪者的な扱いになるのでは?


「大丈夫よ。この国ではあまり重要視されてない遺跡だったし、そもそも私たちが壊したのか自然に壊れたのかなんてバレないわ。ここにはほとんどの人が来られないんだし」


彼女が思ったよりも悪めの思考を持っていることには驚いたが、まぁ実際その通りなので黙っておく。できるだけ目立たないように陸へ上がると、魔法を解除した時に濡れた服や髪を乾かす。私はつけていたティアラをポケットの中にしまうと、そのまま昼食をとるため街の方へと向かった。


「何もないことは無かったけど、かなりすんなりいったわね」


「確かに。今までのと比べても相当楽だったかも」


まさか1日で終わってしまうとは。

アムネス王国名物の海鮮たっぷりのパスタをくるくると巻きながらこれからについて考える。


「一回学校に戻るの?」


どうやら彼女も同じことを考えていたようで、私に次の行動について尋ねてきた。

正直変なタイミングで行ったり来たりするくらいなら、そのまま次のレガリアを探しに行きたいんだけど……


なにせ手がかりが全くない。残るレガリアのうち、1つはおそらくヴィムスが既に所持していて、もう1つは見当もついていないと言う。ヴィムスのアジトを探してもいいけれど、魔法省の内部の動きを聞くと、迂闊に嗅ぎまわらない方が得策のような気もする。


「どの道夏休み中だし、私はこのまま手がかりを探そうかな」


「なら私もそうするわ。一緒の方が都合がいいでしょ?」


しかし、彼女は一度家に戻って荷物を取りに行きたいと言う。私はその申し出を受け入れて、どうせならと2人で彼女の実家であるバートレット侯爵家に向かうことになった。

バートレット侯爵領はアスカニア王国の中でもクリスタル帝国寄りの場所に位置している。私たちは行きと同じように船に乗り、クリスタル帝国を経由してからバートレット領へと入った。


自然に恵まれた豊かな土地は、アスカニア王国の中でも随一の農作物の生産量を誇る。中でもバートレット領の中心を流れる川は透明度が高く質がいいため、それを利用した酒の名産地でもある。


「ようこそ、我が家へ」


豪華な造りながら、大きな窓や自然を生かした庭が特徴的なお屋敷は、とても悪役令嬢の家とは思えないほど温かみのある家だった。乗ってきた馬車を降り中に入ると、エントランスホールの階段から優しそうな男性が降りてきた。


「おかえり、アメリア」


「ただいま戻りました。お父様」


「そちらはエマ嬢だね。貴方のお噂はかねがね。お初にお目にかかる、ケイン・バートレット。アメリアの父だ」


「エマ・シャーロットと申します。この度は突然の訪問、お許しください」


軽く挨拶を済ませると、私はアメリアに連れられて彼女の自室へと向かった。

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