仲間
「……本気ですか?」
「あぁ」
「でも……」
こうなった以上、魔法省の人間を安易に信用することは出来ない。だから、君にしか頼めないんだ。
彼は真っ直ぐこちらを見て、ゆっくりと訴えるように話しかけてくる。
「流石に1人でなんて……」
「もちろん1人では無理だろう。仲間と共にで構わない。君の目と今までの経験で信頼できるものと行ってくれ。君の信頼する者ならば、私も全幅の信頼を置こう」
やりたくない。出来る自信もない。
だって私、ただの大学生なんだよ?ヒロインなんかじゃない。
……でも、やらなくちゃ。そうでなきゃ何も変えられないから。
翌日。
各学校の代表選手たちが自国へと帰っていく。遠い順に帰っていくので、ウィンチェスターアカデミーの出発はお昼過ぎ。それまでは自由時間となっており他校の友人を見送る者、観光に向かう者、試合の疲れを癒す者と皆思い思いの時間を過ごしている。
私はというと、朝食の席で観光にと誘ってくれたセドリックの誘いを断り、声を掛けてくれる人全員の誘いを丁重に退けて、未だホテルの中にいた。
1つ前のカーライルアカデミーが岐路に着き、次の学校までは時間がある。もうロビーに残っている人はほとんどいなかった。
ロビーを抜けると、丁寧に管理された庭園があり、向日葵の花畑を抜けると、そこには静かな噴水を中心とした小さな広場のような場所。一種の隠れ家のような場所になっていて、人は誰一人としていない。
「あら、お待たせしちゃった?」
時間通りに来たはずだったけど……
そう言って日傘を持ち直す彼女こそ、私が出発前にどうしてももう1度話しておきたいと思っていた人物だった。
「……昨日、何かあった?」
一帯に防音魔法を掛ける私を見て、彼女は心配そうに尋ねてくる。
私はその揺れるルビーを安心させるように微笑んだ。
「アメリア、貴方にお願いがあって」
私は昨日ベノに頼まれたこと、そしてこれまでに至る経緯を出来るだけ細かく話した。
アメリアは驚いたような、けれどどこか知っていたと言う顔で最後まで黙って話を聞いていた。
「話は大体わかったわ」
全てを話し終わると、彼女は立ち上がった。
「私にどうして欲しいの?」
「彼らの最終目的だあるいにしえのレガリアを集めて破壊する。アメリアにも手伝ってほしい」
私が心から信用できるのは、同じ転生者である彼女だけだ。
私も立ち上がり彼女をまっすぐ見つめた。
「……破壊の仕方なんて知らない癖に」
「何か言った?」
私は彼女がぼそりと放った言葉を聞き取ることが出来ず、聞き返すが彼女は何でもないと黙ってしまった。
「いいよ。力を貸す。それで?今の状況は?」
「今あるレガリアは翡翠の剣と闇夜のマントの2つ。残りの3つを私たちで探して破壊する」
盗まれていた闇夜のマントは例の潜入の際に翡翠の剣と共に押収された。今は魔法省が管理をしているが、ベノ曰くそちらの方が危険だと言うことで、今はリーシェの魔法で彼女のティアラの中に保管してもらっている。
「ベノさんから情報を貰って、これからアムネス王国まで輝石の宝珠を探しに行く」
「……いいわ。明日からでしょ?休学届、出してくる」
「そうだけど、なんで……」
その問いに彼女が答えることは無かった。
私も彼女の後を追いホテルの中へと戻ったが、その間2人の間に会話は無かった。




