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決着

「やっぱりお前は最高だな」


「それはどうも」


私たちが隠した場所。古城の最上階にある玉座の間。

彼らはその前に立つ石像の1つに狙いを定めていた。おそらく彼らの前に他の学校が何度も試したのだろう。様々な魔法を行使した跡が残っている。


「こちらも隠し場所を教えようか?」


ノエルが意地悪く言った。私は魔法の状態を見て彼らが解除するまであとどれくらい時間が稼げるのか考えていた。彼の目は魔力の流れが見えるだけで、魔法式までは読み取れないのだろうか。まだ解除までは程遠いように思えた。


「結構です。どうせここでしょ?」


私は私たちの宝を隠した石像と向かい合わせになっている石像の前に立った。


「へぇ、お見事」


「やるじゃんお前」


双子はそんな簡単に見つけられるとは思っていなかったのか驚いた表情を見せる。


「どうしてここだと?」


エドガーは興味深そうに問いかける。


「レオン皇子の性格からして、隠すのはここしかないと思っただけです」


私の言葉を聞いて、レオンをはじめとする周囲はお腹を抱えて笑い出した。

いやいや確かに滅茶苦茶だけど、そんなに笑う事?


「流石は婚約者だな」


「やめて」


ルーカスが笑いすぎて零れた涙を拭いながらそう言った。

それなりに関われば大体わかるでしょ。

これ以上の問答は無駄だと捉えた私は、一刻も早く彼らの魔法を解除すべく解析を始めた。


「なにこれ……シンプルなのに意味わかんない」


「俺らの技術舐めんなよ!」


反対側からヨハンが誇らしそうに声を上げた。

いや絶対作ったのお前じゃないだろ、と苦笑いしていると片割れに「ヨハンは何もしてないでしょ」と頭を叩かれていた。やっぱりね。


エドガーとルーカスも加わり3人で少しずつ進めるが、そのスピードは今までの学校の時とは比べ物にならないくらい遅いものだった。

例えるなら、最難関大学の入試の問題文が1行しかないような問題。正直どこから手を付ければいいのか分からない。


普通はどんな複雑な魔法でも元となる基礎的な魔法の魔法式を使っているので、その解除コードを組み合わせられた魔法式に当てはめれば答えが出るのだが、魔法式が短すぎてどの魔法を応用しているのか判断しづらい。こんな短縮魔法あったっけ?見たことないから自作だろうけど、これはもう推測でやるしかないのか?

どうやら2人も同じように考えているが、それ以上答えにたどり着けないようだった。


時間は限られている。闇雲に試しても上手くはいかないだろう。

分かってはいるがそれ以外に方法が思いつかない。


「これ古代魔法みたいな構成だな」


「……今なんて言った?」


「だから、古代魔法みたいな構成だなって」


ルーカスの言葉に私はハッとした。焦りすぎて気が付かなかった。

そうだよ古代魔法以外でこんなに短い魔法式なんてない。


「ルーカス、これ全部古代語に直せる?」


「え?あぁ……」


ルーカスは杖を使って変換後の古代語を宙に浮かび上がらせる。

ラーハの魔法ではない。確かこのあたりの魔法はクリスタルカレッジの禁書の棚にあった。あとは1つ1つ解除コードをぶつけるだけ。細かくは覚えていないけれど、もうここまで来たら後は丁寧に見て行けばいいだけ。


「……あれ?」


「ダメですね。どこか間違っていたのでしょうか?」


エドガーにそう言われてもう1度試すが、やはり結果は変わらない。


「ちょっと待て、コレ端と端の魔法対魔法になってないか?」


対魔法。私たちが使った相乗効果をもたらす魔法の正反対。

打消し魔法を使わなくても、その魔法を打ち消すことが出来る魔法だ。しかしこれはごく一部の魔法にしか存在せず、使い勝手も悪い。そもそも魔法を組み合わせるときに使う人間などまずいないので知名度も低い。おそらくルーカスが気付かなければ私たちは最後までその発想すら出なかっただろう。


「これ、真ん中の魔法以外、全部対魔法ですね」


しかも物凄くマイナーなやつ。

エドガーはうわぁ……と若干引いている。

残ったのはシンプルな1つの古代魔法。おそらくオリジナルだが、効果としてはただ隠すだけのもの。

私はマニュアル通りに解除コードを導き出し、それを杖に処理させ石像にぶつけた。


『ウィンチェスターアカデミーによって魔法が解除されました。これにて本戦団体トレジャーハントを終了します』


「終わった……」


なんだか疲れが一気に押し寄せてくる。

私はその場に座り込んでしまった。


「やるじゃないか。完敗だ」


結構自信あったんだが、とレオンは笑って手を差し伸べてきた。しかし、掴もうとした瞬間彼は手を引っ込める。若干イラっとしたが、もう彼を相手にする気力もなく自分で立とうとすると次はその様子を見ていたルーカスが手を差し伸べてくれた。

コイツもやるんじゃないか、と若干警戒したがそれは杞憂に終わり普通に手を貸してくれただけだった。


「おい、勝手に人の婚約者に触るんじゃねぇよ」


「子供かよ……エマ、帰ろうぜ」


この後パーティーが控えてる。

彼はそのままレオンを無視して帰ろうとしたが、彼も彼で煽り耐性ゼロの子供なのでレオンが少し煽るとそれに反応して言い合いを始めてしまった。


めんどくさいし疲れているので、私は彼らの仲裁に入ることはせずエドガーと共に一旦宿泊しているホテルへと戻った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相手の対になるところに隠すとは、、あくまでも同じ土俵の反対側に隠すあたり対等に戦いたいということでしょうか。一人ひとりの気付きでうまく解除できたので良かったです。おめでとう!!エドガー先輩…
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