一騎打ち
他のチームの動向を把握すると、話し合っていた通り私たちは予定していた捜索経路を大きく変更し離れの棟へと向かう。
そこは最上階の1つ下の連絡通路からしか向かうことが出来ず、下から捜索予定の私たちは最後の方に探す予定だった場所だ。
「早速見つけたぞ」
離れの最上階。本来なら私たちが1番最後に探しに来る予定だった場所。
明らかに宝が隠されているであろう魔法の気配を感じる。
「情報が洩れていると言うことをわかっていれば、案外こちらの方がやりやすいかもしれませんね」
他校の安易な考えにエドガーは呆れたように笑う。
私たちの資料には隠し場所だけでなく、捜索手順なども細かく書かれていた。それを見れば最初に探すであろう場所を避けるのは分かるが、まさか最後になる場所にそのまま隠すとは。もし情報漏洩自体がウィンチェスターアカデミーの戦略だったらどうするのだろうか。
意図せず仕掛けた罠に引っかかった学校の魔法式は、長いだけでとても単純なものだった。
応用と言われる長い魔法やあえて短縮ではなく長いまま使用した魔法が並んでいるだけ。組み合わせるのもそれなりの技術が必要ではあるが、私たちが考えた魔法式を考えればそれはとてもシンプルなものに見えた。
『ウィンチェスターアカデミーによって魔法が解除されました。第5位ライトフォレストアカデミーの生徒は退出してください』
ルーカスがものの数十秒で解除を終えると、ボタンのようなものが出て来る。それを押すと本部に連絡が行く仕組みになっていて、押した瞬間アナウンスが流れた。
この階にはもうないと、1階分下がって捜索を始める。
すると、これまたすぐに他の学校が掛けたであろう魔法の痕跡が見受けられた。認識阻害魔法を掛けてはいるがツメが甘い。
「まさか全部のチームが離れに隠してるってことは無いだろうな?」
「流石にそれは……少なくともクリスタルカレッジはエマさんに教えている段階で僕たちがこのように動くと予想するでしょうし」
先ほどの学校よりは複雑な魔法式だったが、規則性さえわかってしまえば解除コードを得るのもそこまで難しいことではない。
『クリスタルカレッジによって魔法が解除されました。第4位ローズブレイドカレッジの生徒は退出してください』
私たちが解いている間に、クリスタルカレッジもローズブレイドの宝を見つけたようだ。
真っ先に私たちの魔法の解除にかかるかと思っていたがそうではなかったらしい。
『ウィンチェスターアカデミーによって魔法が解除されました。第3位カーライルアカデミーの生徒は退出してください』
そうこうしている間にエドガーはカーライルアカデミーの魔法を解除する。
あと、残っているのはクリスタルカレッジだけだ。
「とは言っても向こうは俺たちの隠し場所を知ってるわけだし、不利なのは間違いないな」
こちらは隠し場所を探すところから始めなければならないため、中々厳しい戦いになりそうだと予測する。せめて隠し場所だけでもわかれば……
『昨日どこからか送られてきた。俺にとってはどうでもいいことだが、お前と対等に戦えないのはつまらない。これは手助けではなく俺のためだ』
その時、昨日のメッセージが頭をよぎった。
婚約するときの条件にもわざわざ魔法競技大会の出場を入れて、得意であろうバトルロワイヤルではなくトレジャーハントに出場している。
彼の性格なら……
「私、隠し場所分かったかもしれません」




