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魔法競技大会開幕……?

そして迎えた魔法競技大会当日。

あれからもたくさん練習した。最後の練習には私の魔法が間に合って、なんと先輩たちのチームにギリギリではあるけど勝つことが出来た。ダミアン先生からもお墨付きをもらえたしきっと大丈夫。


とは言っても団体戦は個人戦が終わってから。

魔法競技大会は、この世界でも有名なスターズと呼ばれる5校が覇を競う大会。大会は全部で7日間。新人戦、本戦の順で個人戦、団体戦が行われる。初日は新人戦女子個人のファーストポイントとフィジカルダービー、パワーサープレッションの予選。新人戦男子個人のウィザードシューティングとパデルテニスの予選が行われる。


知り合いだと女子ファーストポイントにはエリカが男子ウィザードシューティングにはセドリック、パデルテニスにはアルバートが出場するので、その3種目の予選は観戦をするつもりだが、それ以外の時間は基本的に団体戦の練習を軽くすることになっている。


昨日から夏休みに入ったので、出場予定のない生徒の中には既にそれぞれの家に帰った人も多い。私たちの出番は最終日。もちろん課題も出ているので空き時間は少しでも課題を進めようと思っている。


「エマ。そろそろファーストポイント始まるよー」


メアリに呼ばれて私も観客席へと移動する。

ファーストポイントは並べられた的の中から、一回ずつ合図とともに一つだけ光る的に魔法を当てる速さを競う競技。選手5人が一斉に的を狙うが、ポイントを与えられるのは的に当てるのが速かった順に3人まで。それぞれ5・3・1ポイントが与えられ、光っていない的に魔法を当ててしまうと1ポイント減点となる。全部で20ラウンドまであり、最大獲得ポイントは100ポイント。


予選では点数が高い順に2人までが決勝出場となり、決勝では予選を突破した6人で試合をすることとなる。

ファーストポイントに限らずパワーサープレッションとパデルテニス以外の個人戦は全てこの形式だ。


予選は全部で3戦あり、同じ学校の生徒同士は争わないよう別の試合になっているため、予選ではすべての試合において5校の代表選手が出場する。よって予選とはいえ応援者側にもかなり熱が入っている。


第1試合の選手が入場すると、観客から大きな歓声が沸き上がる。

私もこの歓声の中で試合することになるのかな……憂鬱。


「あちゃー。これじゃ予選突破は厳しいかー」


イデアがそう言うのも無理はない。10ラウンド終わってウィンチェスターアカデミーの選手は10ポイント。1位の選手とはかなり差がついてしまっているし、何より選手自身が明らかに疲弊している。これでは逆転を狙うのも難しいだろう。


「なんとか2位にまでは入ってほしいけど、この様子じゃ厳しいわね」


結局ウィンチェスターアカデミーの選手は3位で予選落ち。続く第2試合の選手も予選落ちだった。

そして第3試合。エリカが出場する試合の時間となった。


「エリカー!頑張んなさいよー!」


「筋肉を信じろー!」


メアリはともかくイザナの脳筋具合はどうにかならないものなのか。

エリカはこちらをチラリと見ると、恥ずかしそうに目線を逸らした。……気持ちはわかるよ、うん。


『ラウンド1。レディ』


それぞれが杖を構える。

ポン、という音と共に一番左の的が光った。


「いいぞーエリカー!」


折り返しのラウンド10まで終わると、現在のエリカは44ポイントで1位。このままいけば予選突破は確実だろう。


「やっぱりクリスタルカレッジは強いね」


セドリックが小さな声で呟いた。

魔法競技大会にはスターズと言われる5校が出場している。

私たちが在籍するウィンチェスターアカデミー。5校の中でも最も歴史が長く、この魔法競技大会においても9年連続優勝を果たしており、今年は10年連続優勝が懸かっている。


そして同じくアスカニア王国にある学校、ライトフォレストアカデミー。ここはほぼ全員が貴族のウィンチェスターアカデミーとは違い、貴族と平民の生徒数が半々くらいの学校である。


北の国の魔法学校、カーライルアカデミー。ここは制服からして他の学校とはかなり違うので一目見ただけで分かる。作物に恵まれない土地柄ゆえか魔法薬学の研究が進んでおり、魔法薬学や錬金術といった学問が得意な生徒が多い。


東の国のローズブレイドカレッジ。将来騎士団に入団するという生徒が多く、魔法というよりも肉体的な運動が得意な生徒が多い。個人的にイザナはここに入るべきではと常に思っている。


そしてウィンチェスターアカデミーのライバルと名高いクリスタルカレッジ。隣国、ラピス帝国が誇る名門校。ちなみに10年前、ウィンチェスターアカデミーの連勝を止めたのもこの学校らしい。

さっきの第1試合と第2試合、どちらも1位通過したのはクリスタルカレッジの生徒だった。今もエリカの次の順位の選手はクリスタルカレッジの生徒だ。団体戦でも苦戦を強いられることは間違いない。


「エリカ―!よくやったー!」


「別に当たり前だし……」


エリカは後半の失速もほとんどなく予選を1位で通過した。本人は大げさだと言うが、一人でも予選を通過することが出来て良かったと先輩たちは大喜びだ。


「君たち……頼みますよ」


午前の競技が終わり、皆で昼食をとっていると、顔を真っ青にしたエドガーが頼むから予選は通過してくれと言いに来た。毎年ウィンチェスターアカデミーはどの競技でも予選通過は当たり前だったと聞くし、相当焦っているのだろう。

何となくウィンチェスターアカデミーのエリアの雰囲気悪いし……


午後一番はパデルテニス。パデルテニスは予選という括りの試合ではなく、トーナメント方式で行われる。事前にくじで当たった一人がシード扱いとなり、上位4人が準決勝進出となる。準決勝以降は3日目に行われる。つまり今日行われる試合に2回勝てば準決勝進出だ。


アルバートはなんと一番最初の試合。しかも相手はクリスタルカレッジの生徒。

大丈夫かな?……まぁ緊張して失敗するーなんてキャラじゃないのは知ってるけど。


「アルバート!やっちゃえー!」


試合終わりのエリカもここぞとばかりに声援を飛ばす。

パデルテニスは四方を壁に囲まれた会場でテニスをする競技。壁に跳ね返っても良いものとし、一対一で得点を競うが相手に直接攻撃を与える魔法は禁止。ただしボールやその他の物に魔法をかけることは許可されている。テニスと言ってもラケットを使用しない選手もいるのでぱっと見テニスには見えない試合も結構ある。


しかし、出てきたアルバートは魔法の杖を構える相手とは打って変わって、魔法の杖すら持たずいたって普通のテニスをするかのようにラケットを構えていた。


「どうして……?」


観客の誰かがそう呟いた声が聞こえる。アルバートのことだから流石に考えなしのことではないと思うけど。


アルバートがサーブを打つ。至って普通のテニスのように。

すると相手選手は魔法の杖を振って攻撃を仕掛けた。

……しかし、何も起こらない。それどころが、いつの間にか選手がいるのとは反対の方向にボールが転がっている。


え、何が起こったの?


「幻影魔法だね。あのラケット、もしかして魔法の杖みたいな役割をしてるのかな?あんなの見たことないけど」


「僕が作りましたー」


「「……え?」」


エイドの突然の告白にセドリックだけでなく私たち全員が驚きの声を上げた。いつの間に?てか二人ってそんな仲良かったっけ?


「ピクニック行った日の帰りに拉致されて、急いで作れって言うから徹夜で作ってやりましたわ。ったくこっちは先輩なんですけど。扱い雑くない?……この貸しはいつかたっぷり利子付けて返させてやる」


「でも幻影魔法だけじゃ試合中に攻略されないわけ?」


エリカの疑問も最もだろう。パデルテニスはストレートで終わっても15分はかかる。相手がその間何の抵抗もしないとは考えられない。


「あれ。使い分けてるのか?幻影魔法、蜃気楼誘発魔法、鏡面虚像魔法」


「流石アクア氏。そう、アレのせいで苦労したんだよ。ただ幻を見せてるわけじゃない。アルバート氏は3種類の魔法から選ぶだけでそれが実現される。ここに魔力を使う分、アルバート氏は普通にパデルテニスしなくちゃいけないわけだけど……大口叩くだけあって上手いね」


相手はなす術もなく、アルバートはストレートで勝利した。


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