2度目の魔法競技大会
魔法競技大会当日。
「お疲れ様です」
前年の優勝校生徒会長として選手宣誓を終えたエドガーを迎える。
開会式の会場だけでなく全国に中継されている場であれだけ堂々と話せるのはやはり流石といった様子だった。
「えぇ、皆さんもまずは個人戦に向けて準備よろしくお願いします」
魔法競技大会は、この世界でも有名なスターズと呼ばれる5校が覇を競う大会。大会は全部で7日間。会場が変わっても日程は去年と同様、新人戦、本戦の順で個人戦、団体戦が行われる。初日は新人戦女子個人のファーストポイントとフィジカルダービー、パワーサープレッションの予選。新人戦男子個人のウィザードシューティングとパデルテニスの予選が行われる。
本戦の予選は4日目から。新人戦に出るのは1年生だが、生憎私にはエリザベス以外の1年生の知り合いはいない。と言ってもその彼女ですら私の応援なんかいらないだろうしなぁ。
つまりとっても暇なのだ。
「エマ、この後どうする?」
「開会式も終わったし、ホテルに戻って休むよ」
セドリックはエリザベスのパワーサープレッションを見に行くようだったが、私は遠慮しておいた。
折角セドリックが応援しに来てくれても、その隣が私じゃ彼女のテンションも駄々下がりだろう。ウィンチェスターの先輩としてそんなことで後輩の成績を下げるわけにはいかない。
「じゃあエマちゃん。ホテルのラウンジで俺とお茶しよーぜ」
「え?あぁいいけど」
「ちょ……!」
「俺も行く」
「じゃあ僕も行きます」
私に続いて絢斗とエドガーが同意した。
1人でいても暇だしね。ルーカスやベンも来るらしい。
その様子を見ていたセドリックは「リズの試合が終わり次第すぐ行く!」と早速試合会場へ向かった。
「え?このクッキーって……」
「おやわかりましたか?流石ですね」
エドガーが持ってきたクッキーを食べると、それはどこかで食べたことのある味だとすぐにわかった。プロのケーキや焼き菓子と並んでも全く劣らない腕前。
「アクア先輩が差し入れにと今朝送ってくださいました」
流石はアクア。女子力高すぎか。
一緒に入っていた手紙は香り付きのお洒落な封蝋で閉じられていて、流れるような文字で激励のメッセージが添えられていた。
「女性の先輩ですか?」
「いいえ、アクア先輩は男性よ。エマ達とはフラッグサバイバルで関わったわね」
「えっと……」
「あぁごめんなさい。通りかかっただけよ」
絢斗の質問に答えたのは、偶然通りかかったというソフィアだった。隣にはエリカの姿もある。
「ソフィア先輩、エリカ、お疲れ様です」
「お疲れさま」
「エマと会うの久しぶりかも!」
「確かにお互い忙しかったしね」
エリカとソフィアはもう1つの団体種目であるマジックバトルロワイヤルのメンバーに選ばれていて、向こうも向こうで練習が忙しくいくら近くで活動しているとは言っても顔を合わせることはほとんど無かった。セドリックとアルバートはよくこっちに遊びに来ていたから毎日のように顔を合わせていたけれど、彼らのように無理にでも会おうと思わなければこれが自然な距離感だろう。
「君がエマの秘密兵器、ね」
「え、そんな風に言われてるんですか?」
ソフィアは絢斗を見て「ふーん」と楽しんでいる。
ソフィアとエリカ曰く、突然現れた絢斗は去年の私並みに注目を浴びているらしい。確かに存在としては異質だし、何より私が連れて来たと知れば当然と言えば当然か。秘密兵器というのもあながち間違いではない気もする。
絢斗にも改めてソフィアとエリカのことを紹介していると、息を切らしたセドリックがやってきた。そんなに急がなくて良かったのに。
久しぶりのメンバーに思いのほか話が弾んでしまい、ティータイムは夕食間際まで続いた。




