顔合わせ
「うわぁ。これが例年のレベルですか?」
「えぇ、今年はさらに上がるでしょうけど」
なんじゃこのえげつない解除コードは。
トレジャーハントで使用する魔法は全て、用意された解除コードを飛ばせば解除されるように作らなければならない。しかし、そのコードに特に制限はない。となると、みんなできるだけ長いコードにしようという思考に至るのだろう。
「平均数万文字、か」
これは正確に処理して飛ばすだけでも面倒だな、とルーカスは欠伸をこぼす。
しかし、実情としてはこれだけの魔法を正確に展開することがそもそも難しいため、例年何チームかは上手く魔法が発動せず、ただの宝探しになっているが。
「欲をかいて複雑にするより、ちゃんと発動する方がいいと思いますけどね」
「その通りです。この結果だけを見ればそれなりに魔法を発動するだけで最下位にはならないことになりますから」
私は今までに使用された魔法と解除コードの一覧を眺めていた。
昔は現代魔法の方が圧倒的に多かったけど、ここ数年は古代魔法を使ってくる学校が増えてきた。結果はピンキリだが、優勝を狙う学校は今年も古代魔法を使ってくるだろう。
「3日後から新人戦のメンバーとも合流します。新人戦優勝にはトレジャーハント優勝が欠かせませんから、しっかり教育してあげてください。まぁあのメンバーなら要らないかもしれませんが」
心配症のエドガーには珍しくあまり新人戦について心配していないようだった。そんなに優秀なのだろうか?私は本戦のメンバーが来た後生徒会室を出てしまったので、新人戦のメンバーまでは知らない。
「上手くやれるかなぁ?」
流石に今更いじめられたり面倒なことになったりはしないだろうけど。
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「えっと……」
3日後。今日は新人戦のメンバーと私たち本戦出場組が初めて顔を合わせる日。
会議室にやってきた彼らを見て私は困惑してしまっていた。
1人目は目立つ白髪を腰まで伸ばした美少女。
見覚えがある。入学式で新入生総代を務めた彼女だ。
「エリザベス・バートンと申します。先輩方どうぞご指導のほどよろしくお願いします」
非の打ちどころのない完璧なカーテシー。
けれど、私にはその所作に見惚れる余裕はなかった。
何故なら。
「どうして2年生が新人戦のメンバーなんですか?」
目の前にいるのは、私が転入させた一条絢斗と、そしてもう1人の転入生。
攻略対象の最後の1人であり、私の最推し、ベン・ヘンダーソンだった。




