復帰
寮に戻ると私は早速ウィンチェスターアカデミーの制服に着替えた。1ヶ月ちょっとぶりに着る制服はなんだか久々すぎて違和感を感じずにはいられなかった。そう言えば冬休みの流れでそのままだから、正確にはもっと長い期間着てなかったりするのか。
「リボンってこんな感じだったっけ?」
部屋の姿見に映る自分とにらめっこしながら、漸く着替えが完了した。
いつも通り!って感じではないけど、多分こんな感じで着こなしていたはず。そう言えば元の世界でも、夏休み明けとかスカート何回折ればいいのか忘れて折り過ぎた状態で学校行ったりして生活指導に怒られたなぁ。
「あ、やばい。行かないと!」
一応インターン期間は出席停止扱いなので、それが原因で出席単位が取れず留年なんてことはないが、もちろん私が休んでいる間に授業は進む。向こうにいる間もそれなりに勉強はしていたが、校内で魔法科目をやるわけにもいかず、家に帰って来てからのほんの僅かな時間しか取れていなかった。
学期末のテストを落とすと、それこそ留年だ。それだけは何としても回避しなければならない。
3限が始まるまであと10分。確かこの曜日の3限は私の記憶だと、魔法史だったはず。
私は足早に教室へと向かった。
「エマちゃん?あぁ、帰って来てたのか」
「アルバート久しぶり」
「久しぶりー。いつ帰って来たの?」
「今だよ」
着替えてそのまま授業行くとか真面目過ぎと笑われたが、私は急いでいるので相手をしている場合ではない。じゃあ私魔法史の授業行かなきゃいけないから、と歩みを進めようとするとちょっと待てと引き留められる。
「何?急いでるんだけど……」
「次の魔法史いかない方がいいぜ?」
「どうして?」
「確か今日は授業じゃなくてこの間のレポート課題のグループ発表のはずだ。どうせ行っても得るものなんてないし、何よりさっきすれ違ったセドリックの機嫌が最高レベルに悪かったからな」
そんな時に顔合わせたいなら行けばいいけど。
アルバートはニヤリと口角を上げる。
そう言われてしまえば一気に行く気が失せる。みんなが私を探してくれていることは聞いていたし、心配をかけた自覚もある。きっとセドリックも目の前の彼も少なからず心配させたことに関して怒っているはず。質問攻めに遭う覚悟はしていたが、流石にわざわざ機嫌が悪い時に再開するのは出来れば避けたい。
どうせもうすぐお昼だしサボっちゃおうか。
でもサボったところでどうせ暇だしなぁ。
「よろしければ、俺とお茶でもしませんか?」
アルバートが恭しく手を差し出す。どうやら彼は3限が空きコマらしい。
図書室に行って勉強でもしようかと思ったけど、変に授業で使ったりしている講座があると面倒なので、私は彼の誘いを受けることにした。
彼に連れられてやってきたのは学校の敷地内にあるカフェ、ウィーブルだ。
基本的にはお昼休みや放課後がメインの営業時間だが、この学校には空きコマがあり授業時間内の需要も高いので、この時間でも開けるようにしている。
久しぶりに店内に入ると、エドガーが外部から雇っているバイトが席へと案内してくれた。流石に授業時間に学生にシフトを入れるわけにはいかないしね。
メニューを見ると、期間限定のメニューが変わっていた。そりゃ1ヶ月もあったし変わるよねと思いながら、以前私が考案した期間限定メニューのクロッフルのストロベリーアイス乗せと紅茶を注文する。
アルバートも同じものを注文し、運ばれてくるのを待つ。
その沈黙が何だか気まずくて私は適当に話題を振る。
アルバートは元々話がうまいのもあって、話題さえ振れば上手く会話を成立させてくれる。私はそんな彼の話に相槌を打ちながら先に運ばれてきた紅茶を啜った。
「お待たせいたしました。期間限定、クロッフルwithストロベリーアイスです」
聞き覚えのある声に顔を上げると、そこにはとてもいい笑顔をしたエドガーが立っていた。
お久しぶりです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
突然ですが、潜入任務編は完結しこのお話から春休み編に突入いたします。最近リアルの方が忙しく、また今度あとがきに書けばいいやーと思っていたら、いつの間にか終わってしまいました(笑)
春休み編は5話くらいで完結し、ついにエマ達は2年生に進級したします!
転入生も来ますし、新入生の新キャラも登場いたしますのでお楽しみに。現在鋭意執筆中です。
今更ですが、皆さまの夏休み期間は基本的に早めの時間に投稿します。大体どの学校も9月には夏休みが終わると思いますので、9月に入った後は夕方くらいに投稿する予定です。
よろしければ、ブクマ評価お待ちしております!
これからも『ヒロインって案外楽じゃないですよ?』をよろしくお願いいたします!




