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取り調べ

「……え?インターン?」


私の自己紹介によって彼はより混乱した様子でこちらを見つめていた。


「そう、インターン。ついでに言うと、私は魔法学校ウィンチェスターアカデミーの生徒。任務のためにアストロスクールに潜入してたの」


「え?でもエマは魔法が使えないって……嘘、ついてたの?」


驚きと悲しみ。失望に近いものを目に宿しながら彼は私に問うてきた。

けれど、私はフフッと笑って彼の向かいの席に腰掛けた。取り調べは私に与えられた仕事。ちゃんとやり遂げなければ。


「嘘をついていたのはどっち?」


「……え?」


「君、魔法使えるんでしょ?一条絢斗くん?」


目を見開いて押し黙る彼を私はずっと見つめていた。

ノエルのように魔力の流れで嘘をついているか見抜くなんてことは出来ないけど、仕草や視線に注意して観察していればある程度は分かるものだ。

きっと彼は魔法を使えることを自覚はしているが、まだ使ったことは無いもしくは上手く使えないのだろう。そうでなければ彼を鞄で殴るなんてことは絶対にしない。魔法を使って逃げることを優先するはずだ。


「どうしてそれを……」


「うーん……可愛い女の子が教えてくれたの」


彼は疑問符を浮かべたが、そこを深堀している場合ではないらしい。ボロを出したくないのかそれ以上聞いてくることは無かった。


「あんまり言いたくなかったけど……」


私はガラスのボトルに入った紫の液体を彼に見せ机に置いた。

けれど彼はこれが何かは分かっていないらしい。まぁ専門の教育でも受けていないと見ることも無いか。


「自白剤だよ」


「そんなものどこで!?」


驚くのも無理はない。自白剤は大昔に禁じられて以降使われていない。今は罪人にもある程度権利が認められ、そのうちの1つである黙秘権を守るためにいかなる場合でも使用してはいけないと決まっている。もちろん国家転覆とかのレベルになればその限りではないだろうけど。

現在では使用はもちろん、製造や販売、所持しているだけでも罪に問われる。彼もきっと存在自体は知っているだろうが、実際に見たのは初めてなのだろう。


「私が作ったわ。魔法薬学は割と得意なの」


ある程度は化学の知識が使えるし。

彼は目を見開いた。まぁレシピも一般には公開されて無いしね。私もこの作り方は禁書の棚で見た本で知ったわけだし。


「出来れば使いたくないけど、君がどうしても話さないって言うのなら使うしかないね」


自白剤が禁止された理由。それは罪人の黙秘権を守るためだけではない。

それは強力な薬品故に、使用者へ与える甚大な副作用にあった。これは特に魔法耐性の低い、魔法の使えない非魔法族ほど高く、場合によっては脳細胞を破壊され記憶障害や植物状態を余儀なくされることもあると言う。


今の彼の総魔力量が分からない以上断定はできないが、おそらくそれなりの副作用は伴うだろう。

彼も副作用の知識はあるらしく、丁寧に説明する必要は無かった。彼はそれを見ておそらく本物だろうとため息をつき、ゆっくりと口を開いた。


「……何から話せばいい?」


「じゃあまずは君がエレジアと関係を持った経緯について」


部屋の隅にいる書記がやっとかという様子でペンを動かし始めた。


「僕には10歳になっても魔法の才能が開花しなかった。だから父さんは僕を後継者から外して再婚した。ただただ悔しかったんだ。あれだけ努力してきたのに、魔法が使えないってだけであっさり見捨てられるのが。だから、父さんが認めざるを得ないくらいすごい人間になろうって決めた。名門アストロスクールを受験して、独学で魔法関連の学問も勉強した」


アハハッと彼は自嘲するように笑った。


「でも無駄だったよ。だって僕は所詮魔法が使えないんだから。そんな時、アイツに出会った」


「アイツ?」


「エレジアの教祖だよ。ミスターって名乗ってるけど本名は知らない。アイツは僕に聞いてきた。『魔法が羨ましいか?』って。それで僕はこう言ったんだ。魔法が使えるなら他には何もいらないって。そしたらアイツは言う事を聞く代わりにこれをくれた」


彼が指さしたポケットの中には、私が彼の受け取っているところを見たあの石があった。石は3センチほどの欠片で水色の光を放っていた。


「これは?」


「魔力だよ」


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