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作戦開始

窓の外から心地のよい光が差し込む。窓を開けると澄んだ肌寒い空気が私の頬を撫でる。

洗面台で顔を洗う。鏡に映る自分の顔には久しぶりに深いクマが刻まれていた。


「いつぶりだっけ?」


思えば総合文化祭が終わってからは長い短いはあれど、ちゃんと毎日眠っていた気がする。特に最近はものすごく健康的な生活を送っていた反動か、たった1日徹夜しただけで信じられないほど体が怠い。

流石にこれではいけないと、コンシーラーで応急処置をして服を着替え、学校に欠席の連絡をする。

今日から再開だそうだが、残念ながら呑気に登校している場合ではない。


「おはようございます」


会議室に戻ると、同じく最低限の身支度を終えた職員たちが死んだ目で朝食をとっていた。彼らは割と徹夜は慣れているだろうと思っていた私は、普段あまり徹夜はしないのかと尋ねた。


「普段は定時退社どころが午前中退社だよ。ここ1週間は忙しすぎて最後に寝た日思い出せないけど」


彼はゼリー飲料をジュっと飲み込むと作業を再開した。

あぁなるほど、1轍目じゃないんですね。

私は深く考えないようにしながら一条に掛けた追跡魔法で彼の現在地を確認する。


「まだ家か」


私はホワイトボードに時間と彼の現在地を書き込んだ。

それぞれが朝食をとり終わると、誰かが声を掛けたわけでも無いのに全員が会議室に集まった。

そこからは何となく会議のようなものが始まりそれぞれの役割を確認する。


「エマちゃん。アレ出来た?」


昔誰かから聞いた徹夜をすると仲良くなる、というのは本当らしい。みんな思考がバグってくるから距離が縮まりやすいのだろうか。昨日までシャーロットさんとかエマさんとか呼んでいた職員の人たちのほとんどは私のことをエマちゃんと呼ぶようになった。


「作りましたけど……ほんとに使うんですか?絶対いろんな法に触れますけど」


「あくまでも最終手段よ」


今日の午後には反魔法組織連合の幹部会があるそうで、剣がヴィムスに引き渡されると考えられる。ヴィムスが絡むと面倒なので、エレジアにある午前中にカタをつけようという狙いだ。一応本部から戦える人は何人か派遣してもらえるらしい。


とはいえ今回の私の仕事は最前線ではない。流石にただのインターン生を最前線に出して万が一にも死なせるわけにはいかない。一応クリスタル帝国の皇太子の婚約者でもあるわけだしね。

という訳で今回の私の仕事は一条絢斗の確保と取り調べ。もう何かしらのかかわりがあることは間違いないのでそのまま身柄を拘束するらしい。魔法が使えるとリーシェは言っていたけど、流石にそこまで莫大な魔力は持っていないだろうし、特に難易度が高いわけでも無い。注意するとすれば古代魔法を使ってきた場合だけど、それも多少はリーシェが何とかしてくれるだろう。


「ここに来てから色々あり過ぎてかなり楽観的になったよなぁ、私」


「何か言った?」


「あ、いえ。何でも」


「じゃあ準備が出来次第行くわよ。ちゃんと緊張感は持ってね」


はーい。

気の抜けた私の返事に彼女は呆れたような諦めたような顔をする。

だって久しぶりに徹夜してもう頭回らないんだもん。なんかあるでしょ。オール明け特有のどうでもよくなるやつ。私はテスト当日に絶対になってたわ。謎の自信になるのよね。


時刻は7時を回ったところ。そろそろ彼が家を出て登校するはず。同時にやらなければ逃げられる可能性があるので、みんなその時間に合わせて作戦を決行する。耳にはフラッグサバイバルの時に使っていたイヤホン型の通信機。ワイヤレスイヤホンと同じような見た目だが、どれだけ動いても落ちないのはすごいと思う。まぁ魔法のおかげなんだけど。


「準備できました。いつでも行けます」


「わかったわ」


髪をくくっていよいよ会議室にも緊張が走る。

今回の責任者の男が何かあればすぐ連絡するようにとか、大きなけががあればとりあえず私に駆けつけてくれだとか色々注意事項みたいなものを話し始めた。


「最後になるが……翡翠の剣は絶対に渡すわけにはいかない。みんな、死んでもヴィムスに渡るのを食い止めるんだ。いいな?」


「「はい!」」


私たちは彼の家へと向かった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] エマちゃんが作ったもの、魔法関連のものかなぁとは思いますが法に触れるとなると危ないものか手に入るようになるとまずいものにはなると思います。できれば使わずに済んでほしいですが今回使わなくても…
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