徹夜
人の話はちゃんと聞こう。うん。
時計の針は既に真夜中を指していた。
許可をとるのがこんなに大変だとは思わなかった。
多分彼らは私がレオンの婚約者だからと頼んだのだろうが、生憎私は彼の連絡先など知らない。
だからまずはベノさんへの連絡。何度連絡しても出てくれないから仕方なくヒューゴに連絡すると、彼はこの件に関して知らないのではじめから説明する羽目になった。そして、話している間にベノさんが来たらしく、もう一度今の状況を説明した。後はベノさんからクリスタル帝国への許可をとってもらえる。そう思った私は甘かった。
本当に忙しいらしく、今はトップの彼ですら現場に出ている状況だという。当然電話や手紙など書いている暇がないので、私が直接連絡してくれ、婚約者だろ?と連絡先だけを教えられた。
30分ほど葛藤した後、私は腹を括ってビデオ電話を掛ける。するとワンコールで出た彼は私から連絡するとベノさんからメッセージを預かっていたらしい。
そしてもう一度最初から説明し、クリスタル帝国への許可を求めた。すると彼は皇帝を呼んでくるから待てと言って、本当に皇帝を連れて来た。呼ぶなら最初から呼んでくれ。
私はド緊張の中で、若干ヤケになりながら4度目の説明をする。
結果として許可は貰えたが、途中参加してきた皇后さまのマシンガントークやレオンの誘いやらでビデオ通話後の私のHPはゼロだった。
もう寝よう。許可とれたって報告だけして寝よう。
そう思って未だ話し合ったり作業をしている会議室のドアを開ける。
「失礼します」
許可取れました。では、私はこれで……
一瞬で部屋を出ようとした私を誰かが引き留めた。
何ですか、と振り返るとそのスクリーンにはたくさんの疑問点が整理されていた。
・なぜ反魔法組織が空間転移魔法を使えるのか。
・『カルロス様』とは誰か。
・犯行の手口は?……
貴方、何かわかることはある?
私は回らない頭で必死に考えた。大体わかります、と答えるべきか否かを。
知っていることは話すべきという気持ちと、答え始めれば寝られない。知らないと言っておいて、明日以降思い出したとか言えばいいんじゃないかという気持ちが葛藤する。
というかなんでこの人たち知らないの?
カルロス様はヴィムスのトップで、翡翠の剣は私の魔法を解除した後転移魔法で持ち出したんでしょ?あれ、報告してなかったっけ?それとも彼らに情報が降りていないだけ?
変に黙っていれば、この人たちの作業を増やしたりしちゃうかもしれないしな……
さよなら。私の睡眠時間。
「あー。大体わかりますよ。詳しいところまでは知りませんが」
私は置いてあるコーヒーをカップに入れ一気に仰いだ。




