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フラッグサバイバル……?

フラッグサバイバル練習当日。

演習場α。今までは上級生専用の練習場だったが、今日から大会まではフラッグサバイバル出場選手専用の練習場となる。私は魔法感知スーツに着替えてそこに向かった。


「エマ。久しぶり」


「セドリック。セドリックもフラッグサバイバルの選手だったんだ」


「もしかしてエマ、出場選手の発表見てないの?」


まぁ……どうせ誰になっても一緒だし、練習が始まる前に憂鬱な気分になりたくなかったんだもん。

せめてチーム内で昨日みたいなことをする人がいませんように。


「子羊ども。そろっているな。今年のフラッグサバイバルの新人戦の担当は俺だ。ビシバシ教育するのでくれぐれも死なないように」


え、死ぬの?どんだけハードなのよ。

そういえばダミアン先生ってこの学校のOBだったな。魔法競技大会で3連覇したって……種目は確かフィジカルダービーとファーストポイント。団体戦はフラッグサバイバルでそこでも3連覇したらしい。フラッグサバイバルの指導者になるのも当然か。


まずは自己紹介と言われ、一人ひとり自己紹介をしていく。


一人目はセドリック・バートン。

彼だけでも私のことを悪く思っていない(と信じたい)人がいて良かった。顔見知りも彼だけだし。


二人目はイザナ・ブルー。

王国騎士団長の息子で筋肉主義者の脳筋。でも見たところ細かいことは気にしなさそうな明るい性格。曲がったことは嫌いそうだし、意外とやりやすいかもしれない。


三人目はエリカ・カーソン。

私以外の女子は彼女だけ。侯爵家の令嬢。しかし、見た目はかなりボーイッシュで性格も二人目のイザナ・ブルーに似たものを感じる。


そして四人目はアルバート・グレンジャー。

赤い髪に緑の瞳。この世界には珍しく両耳ともピアスを開けている。……間違いない。攻略対象だ。

正直一番警戒すべきは彼だろう。できるだけ関わらないようにしよっと。


とは言っても、全体的に見れば割とやりやすいメンバー構成だ。エドガーが考慮してくれたのかは分からないけど、これはかなりありがたい。


「終わったな?次はそれぞれのポジションを発表する。これは選考会の結果やそれぞれのポテンシャルを考慮して俺とルイスで考えた。今後の練習次第では変動することもあるのでそのつもりで練習に励むように」


新人戦ということもあって、ポジションはセオリー通りガード2人、アタッカー2人、フラッガー1人の構成で行くらしい。ガードはフィジカルの強いイザナ・ブルーとエリカ・カーソン。

マズい。これだと私とアルバートがアタッカーになってしまう。

出来るだけ接触は避けたかったのに。フラッガーはチームのエース。間違いなくセドリックが選ばれる。まじかぁ……


「アタッカーはアルバート・グレンジャー。そして、セドリック・バートン……フラッガーはエマ・シャーロット。」


え?


「それぞれのポジションごとに指導をしていく。俺が指示を出して回っている間、待っている者は基礎練習を行うように。散れ!子羊ども!」


みな戸惑いながらもそれぞれのポジションに分かれて練習を始めた。


どうして私が……いや、アルバートと同じポジションじゃなくて良かったっちゃ良かったんだけど。

でもやっぱり選考会にすら出ていない私がフラッガーって……


「俺の決めたポジションが不満か?シャーロット」


「ダミアン先生。いえ、そんなことは……」


「お前の気持ちはわかるがな。そもそも個人戦の出場選手以外が団体戦に選ばれるのは長いウィンチェスターアカデミーの歴史でも初めてのことだ」


私を選手に推薦したのも、フラッガーにと言ったのもダミアン先生ではなくエドガーらしい。

まぁそうだろうなとは思っていたけど。彼がそこまでする理由が分からない。

選手に推薦したことには理解できるが、フラッガーはセドリックだと思っていた。先生だってきっとそう思っていたんだろう。


「ルイスが俺にあそこまで意見するのは初めてだったからな。お前の入学当初からの成長と努力を見ていればルイスがお前に期待するのも理解できる。それに、俺もお前には期待している」


それから先生は一通りの練習メニューを指示してからアタッカーの二人のもとへと向かった。

よし、頑張ろう。

何より、あんな先生に大人の色気たっぷりで「頑張れよ」なんて言われてしまえば頑張るしかない。


初日の練習が終わると、一斉に他のメンバーが私のもとへと駆け寄ってきた。

皆で一緒に大食堂で食事をとろうなどと言われて断れるはずもなく、5人で同じテーブルにつくと、周りからやたらと視線を感じる。目立つから仕方ないんだけど。


「お前すごいな!まさかあのセドリックを差し置いてフラッガーなんて!」


「あ、えっと……」


「あぁ、すまない。俺はガードのイザナ・ブルー。折角同じチームになったんだ!よろしくな!エマ!」


圧が凄い。声量もヤバいし。

絶対この人野球部かバスケ部に入ってて文化祭で女装する系の人だ。


「イザナ。エマが困ってるよ」


私の隣からそう声を掛けたのはセドリックだった。

あぁセドリック。私はこんなにも君のことをありがたいと思う日が来るとは思わなかったよ。


「でも意外。アンタのことは目立つから一方的に知ってたけど、噂じゃ実技は苦手っていう話だったから。あ、私はエリカ・カーソン。エリカでいいよ。よろしくね、エマ」


「こちらこそよろしく、エリカ」


「エマはすごく頑張り屋さんなんだ。選考会は怪我で出られなかったけど、実力は本物だよ。僕が保証する」


セドリックはそう言って私の頭を撫でる。よくそれやるけど、気に入ってるのかな?

でも正直国宝級イケメンに優しく微笑みながら頭撫でられるとか、惚れるからやめて欲しい。

セドリック。アンタ、アイドルだったらリアコ枠だよ。罪作りな男だよ。


「ふーん。セドリックが認めるなんて相当ね」


「俺もエマちゃんは中々だと思うぜ?魔法薬学の実験で生み出した方法をダミアンが論文にして今度学会で発表するらしいし。何よりこの間、人気のない廊下で5人の女の子たち相手に怪我させることなく魔法を打ち消してた」


あれ、打消し魔法のレセプテイトだろ?と聞かれれば頷くしかない。見ただけでわかるなんてすごいな。アレ、開発されたばかりの上級魔法なのに。

驚くイザナとエリカ。弁明をしたいのに、怒っているのか冷たい空気を出しているセドリックのせいで、私は苦笑いをするしかない。


「あのレセプテイトを成功させたのか!それはすごいな!あれは便利で強力な代わりに上級魔法師でも成功させるのが難しいと聞いている」


「実力はもちろん、頭も切れると。そりゃ使いたくもなるわね、納得」



それから練習後で一緒に食事をするのがすっかり日課になってしまった。それどころが朝食や昼食、授業でも近くの席に座ったりグループを組んだり。先生の指導は中々厳しかったが、それも相まってなんだか強豪校の運動部みたいだなと思ってしまった。


「今日からは摸擬戦だ」


摸擬戦?確かに試合形式で練習しないと意味はないんだけど……

でも誰と?フラッグサバイバルには補欠を用意していないし。

そう思っていると、数人の生徒が演習場に入ってきた。

大会まで演習場αはフラッグサバイバルの出場選手以外立ち入り禁止のはずだけど……でもあの人たち魔法感知スーツを着てる。ってことはあの人たちが練習相手?


「こいつらは本選のフラッグサバイバルの出場選手だ。これからはこいつらと試合をしつつ作戦などを決める。ポジションでわからないことがあるやつは同じポジションの子羊に聞くといい。……では早速だが、試合を始める」


先生がそう言うと、グラウンドと同じような風景だった演習場αがすぐに森の中のような風景へと変わる。私たちは旗の周りを囲うように立たされている。実戦形式は初めてだったのでみな戸惑っていると、反対側から女性の声が聞こえる。


「さてさて。今年の1年生は皆可愛いねー。どこまで頑張れるかな?」


私たちは私語を辞めて背筋を伸ばす。

あの人たちは私たちよりもはるかに上の人数の、それも実力ある人達の中から選ばれた人たち。経験も知識も私たちの比じゃない。本気でやらないときっとコテンパンにされる。


「試合開始!」


その合図とともに、私たちは一斉に動き出した。

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