表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/197

月夜のパルフェ

そう叫んだと同時に終了のブザーが鳴った。

ここからはいよいよ審査の時間だ。参加者20名分のスイーツが長いテーブルに1列にして置かれる。

私たちは自分の番が回ってきたら、そのスイーツに関しての説明を行い、試食が終われば点数が出る。私は13番目。11番目までの段階で最高得点はサイエンス部の300点満点中210点だった。


「このスイーツの名前は『満月のアップルパイ』ですわ。その名の通り丸いアップルパイを金箔をかけて満月に見立てました。中には……」


イレナが自分の作ったスイーツの説明をする。やっぱりそれ金箔だったんだ。

そんなことを考えているうちに試食も終わり得点が出る。


味:92点

独創性:65点

完成度:71点

合計:228点


やはり独創性に関しては評価が伸び悩んだものの、味に関しては完璧に近いものだという評価がなされた。そんなに美味しいのだろうかと眺めていると「一口いかが?」と聞かれて二つ返事で頂いた。

中に使われている林檎がとてもジューシーで自家製のカスタードクリームとの相性も抜群。生地自体もバターがたっぷり使われているが、カスタードが軽いので全体的にとてもバランスがいい。

あぁ、これは美味しいわ。


感想を求められ、素直に評価すると、イレナはとてもうれしそうに鼻歌を歌っていた。「当然ですわ」と冷静に装っていても、嬉しいものは嬉しいらしい。

なんかちょっと可愛いな。


彼女の審査が終わると、次は私の番だ。

私は求められるままに説明を始める。

名前は『月夜のパルフェ』名前の通り、月夜をイメージしたパフェだ。

出来るだけ着色料は使わず、食材そのものの色を使って表現しており、下には紫のゼリーを入れ、中段には青いイチゴを使ったムースとスポンジ。そして、上には星をイメージした琥珀糖を使ったアイシングクッキーとマカロン、そしてアイスクリームを乗せた。


「これは何だ?」


審査員のダミアン先生が手に取ったのは、私がパフェに別添えしたソースだ。


「レピュタスの花びらを使ったソースです。ぜひアイスクリームに掛けてお召し上がりください」


一通り見た目の審査が終わると、試食へと移り、先生は手に持っていたソースをアイスクリームに掛けた。すると、1番上に盛られたアイスクリームはまるで満月のように輝き始めた。


「どうなっているんだ?」


先生たちは興味深そうにパフェを覗き込む。審査員の先生やパティシエたちもどうやらこれは予想外だったらしい。

レピュタスというのはメアリが研究していた月下で咲く植物であり、魔力を溜めこむ性質がある。1番は花粉だと考えられているが、試作品で試したところ花弁でもこの程度であれば十分な反応が得られることが分かった。


アイスクリームにはリリアスのジャムを使用しており、ソースをかけるとレピュタスの魔力に反応して満月のように優しく光りだすのだ。

夜空に浮かぶ丸い月をイメージしたスイーツ。正直私の伝えたいことがちゃんと伝わる自信は無かったが、この様子では補足せずとも私の意図はくみ取ってもらえたらしい。


試食が終わると、私は静かに結果を待つ。今の最高得点はイレナの叩き出した228点。去年の優勝者の得点は225点だったから、恐らくこのままならイレナさえ越えれば優勝の確率は非常に高い。

私は高鳴る心臓を抑えながら、心の中で祈った。


すこし時間が経った後、私の得点が巨大なスクリーンに映し出される。


味:78点

独創性:91点

完成度:81点

合計:250点

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ