魔力指数
私はバイトが終わってから、その手紙を取り出しペーパーナイフで丁寧に開けた。
するとそこには2枚の紙が入っていた。
「それ、ヒューゴ王子から?」
「うん……って、え?」
声のする方を見ると、そこにはセドリックとルーカスが立っていた。
2人共今日はウィーブルに来ていたから、私のシフトが終わるのを待っていたのだろう。
手紙の内容もおおかたわかっていたので、私はエドガーに頼んでVIPルームを開けてもらい、3人で手紙を見ることにした。
部屋に入ってすぐに手紙を確認すると、やはり先日のインターンの内容だった。
1枚目の手紙には現在わかっている解析結果が玲瓏な文字で綴られていた。
「で、何かわかったのか?」
ルーカスに急かされて、私はえぇっと、と書いてある内容を要約する。
先日の事件。解析の結果、やはり彼らの変死の結果は幸運のタロットカードが原因だとわかった。あれには持ち主の魔力を他の場所へと転送する魔法が掛けられていたという。転送先までは特定できなかったが、おそらくその魔力はラーハ神殿を開けるために使われており、犯人はそれを成し遂げたと考えられる。ラーハ神殿は本来ラーハの血を持つものしか入れないとされていたが、ある一定以上の魔力があれば無理やりこじ開けることが出来るらしい。
そして、これを成し遂げるには大量の魔力が必要であり、被害者たちの魔力量から計算すると、判明していない被害者がまだ多くいるという。
私たちには犯人たちの目的と考えられるレガリアを全て入手させる前に止める任務をインターン期間は終わったが、引き続き協力して欲しいとのこと。これはおそらく私のティアラのせいだろう。
「残るレガリアはあと3つ。それまでに止めないと」
「だな。そう言えば、もう1枚は何が書いてあるんだ?」
ルーカスに言われて私はもう1枚の紙を取り出した。
何やらグラフやら数字やらがたくさん書いてある。これって……
「魔力指数?」
「エマの?」
「お前今まで測ってなかったのか?」
魔力指数とはその人が持っている魔力を魔力測定器で量るよりも正確に測定することが出来る。とはいえ魔力測定器のような手軽なものではなく、専門機関で解析をする必要があるため、受けるのはほとんど貴族のみで庶民が受けるなんて話は聞いたことがない。
魔力至上主義の貴族間の結婚では、プロフィール代わりに魔力指数を提出するのだとか。
瞬発性、威力、有効範囲など様々なことを調べてくれるが、特に重要視されるのは魔力の総量。
この世界ではおよそ8割が魔力指数1000未満で、魔法を使う事の出来ない所謂非魔法族。とはいえ魔法の存在する世界で生きている以上多少は魔力の影響を受けるので魔力指数0という人はめったにいない。
次に1000~2000の一般層。このラインは魔法学校に進学し、日常魔法までは使用できるような魔法族だ。そして3500を超えるとスターズのような所謂名門校への進学が許される。このレベルになると日常魔法以外の高等魔法も扱えるレベルの魔法師となる。
しかしこれ以上の上限はなく、スターズには3500ギリギリのものから異常なレベルの魔力を有する者もいる。
「2人って魔力指数どれくらいなの?」
「俺は7500ちょっとだったはずだ」
「僕は10852だよ」
このように学年主席レベルともなると普通の生徒の3倍近くの魔力を持っていたりする。と言うかもう桁が違う。あれ?でも私ってセドリックよりも長い時間光らせて無かったっけ……?
自分でも内心ビクビクしながらその紙を見る。
それは紙の一番上の目立つところにでかでかと書き記されていた。
エマ・シャーロット
魔力指数 14700ポイント(推定)




