二十五、ゴミ箱と少年
翌日がテスト期間最終日、というところへ来てタケシの集中力は底をつこうとしていた。
明日は苦手な数学のテストが控えているというのに、いくら問題集とにらめっこしても一向に手は進まなかった。
鼻をかんだちり紙をゴミ箱に向けて放り投げる。
狙いはわずかに外れ、ちり紙はゴミ箱の右十センチの所に落ちた。
小さく舌打ちをして椅子から立ち上がってゴミを拾う。
タケシは悔しくなったのか、ちり紙を持って椅子に戻った。
そして、それを再びゴミ箱に向けて投げる。
今度はゴミ箱のわずか手前に落ちた。
こうなるともうヤケだった。
ゴミ箱に嫌われているのか、微妙にコントロールが外れたり、ゴミ箱の縁に弾かれて床へ落ちたりと何度やっても上手くいかない。
それがテストの結果を暗示しているようにも思えて、躍起になってちり紙を投げ続けた。
奮闘すること十分。上手くいかない苛立ちをゴミ箱そのものにぶつけようと、肩をいからせてゴミ箱へ歩み寄る。
手始めに床に落ちていたちり紙を踏みつけようとした時だった。
ゴミ箱から白い手がぬっと伸びてきてちり紙を掴むと、ゴミ箱の中へと戻っていった。
「うえっ!?」
驚きのあまり腰を抜かしたタケシが恐る恐るゴミ箱を覗き込むと、中身は空になっていた。




