表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全版・怪奇短編集  作者: 牧田紗矢乃
日常ノ怪②

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/105

十一、砂場①

 ある時、二つ年下の弟が落とし穴を作りたいと言い出した。

 その前の晩にお笑い芸人が次々と落とし穴に落とされていく番組を観た影響だろうか。

 当時小四だった私も一緒になってテレビを見て大爆笑していたので、二つ返事でスコップを持って公園に向かった。


 公園の中でも掘りやすいところ、ということで私たちは砂場を選んだ。

 大きな穴を作るため、親が家庭菜園に使う大きめの鉄製のスコップを持ち出して穴を掘った。


 無心で作業を続けた結果、陽が暮れる頃には私の膝くらいの深さの穴が出来上がった。

 当初の計画よりは浅かったけれど、穴の底に水が溜まり始めたのでこれで完成にしようと段ボールで蓋をしてその上から砂を被せた。

 今思えば粗雑な作りだ。




 落とし穴に落とすターゲットは二軒隣の男の子にしようと弟と決めた。

 弟と同じか一つ年下だったその男の子は、反応が鈍くて少し変わった子だった。

 そんなのろまが落とし穴に落ちたらどんな反応をするだろう。


 弟と二人悪ガキじみた作戦会議をしながら布団へもぐる。

 作戦決行は翌日。ワクワクしてなかなか寝付けなかった。




 次の日、男の子を公園に誘い出すと上手いこと落とし穴がある砂場へ誘導した。

 私と話しながら歩いている途中、急に足を取られた彼は驚きで目を丸くして、そのまま穴に吸い込まれる。


 初めは腹を抱えて笑っていた私たちだったが、どうも様子がおかしいことに気が付いた。

 私の膝の深さしかない穴に、男の子の体はすっぽりとはまってしまったようだ。

 おかしいと思い穴を覗き込むと、そこには水の溜まった浅い穴があるだけだった。


「いない! 消えちゃった!」


 とんでもないことをしてしまったと慌てた私たちは家に飛んで帰って母親に事情を説明した。

 子供の拙い説明だからか、母親にはあまり伝わらなかった。

 強引に手を引いて公園に連れて行き、ここに落ちた子が消えたと何度も繰り返し訴えた。




 その後、泣きじゃくる私たちは母親に連れられて二軒隣の家に謝りに行った。


「そんな子いませんよ」


 私たちの説明を怪訝な顔で聞いていたその家のおばさんはそう言ってぴしゃりと戸を閉めてしまった。

 母親もそこの家に子供なんていないはずだと言っていた。

 けれど、私たちは確かにその家に男の子を迎えに行ったのだ。


 私たちがあの穴に落としたのは一体何だったのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ