八、花火
いつか恋人ができたら、一緒に花火大会に行きたいな。
夢見る少女だった私は、夢見る少女らしい蕩けた妄想を胸に生きてきた。
けれど、それが現実になることはないまま呆気なく事故死。死んでから自分の生き方の馬鹿馬鹿しさに気付いたけれど、時は既に遅かったらしい。
「恋人と花火大会に行く」
そんな馬鹿げた未練のために成仏できなくなってしまったのだ。
私の周りで愚痴れる対象は、正体不明のヘンな霊ばかり。
小さくて微妙に発光している。人懐っこいから元はきっと犬とか猫みたいな動物だったんだろう。
「幽霊になってから恋人作ろうってのがまず間違ってると思うのよね」
返事をしない小さな発光体は、身体を擦り付けるように私の周りに集まってくれた。
そこに通りかかったのは、私と同じくらいの年頃の男の子だった。
「きみが輝いて見えた」
後に彼は私の第一印象をそう語った。
きっと輝いていたのは私じゃなくて周りにいた小動物のようなモノ。
だけど彼はそれを「一目惚れ」だと勘違いしていたから、あえて訂正はしないでおく。
なんて言ったって相手を選んでいられる場合じゃないのだから。
このチャンス、逃してなるものか。
奇遇なことに、彼も私と同じ未練を持った幽霊だった。
高校生ってそういう年頃なのかしら?
けれど生憎今の季節は秋。
この辺りじゃ花火大会は軒並み終わってしまったので、私たちが成仏するにはもう一年かかりそうだ。
ため息をついて空を見上げる。
それを合図にしたかのように、空に沢山の光が弾けた。
音こそ聞こえないものの、それはまさに花火だった。
私の周りにいた小動物みたいなモノたちが、体を寄せ合って空に昇っては弾けるように四方へ飛んでいく。
まるで私たちを祝福するように。
飛び散っていった子たちは体を擦り付けるように私の所へ戻ってきて、何度も何度も花火のような景色を作ってくれた。
「ははっ……花火、見れたね」
未練が晴らされたから、体が消えかけている。
気付いていても、私たち二人は手を繋いだまま静かに無音の花火を見上げていた。




