十四、相席
最近入った新人はどうにも癖のある子だ。
人よりワンテンポ遅れている不思議ちゃん。
それを気にしている素振りもないので、こちらとしてもどう扱うべきか迷うことがある。
そんな彼女の行動で私が気になったのは椅子の座り方だ。
座面の端ギリギリに腰掛け、ほとんど空気椅子のような状態で仕事をしている。
座り直したりする様子もない所を見るに、それが彼女にとって普通で、昔からの癖なのだろう。
座面の七割が空いている彼女の椅子をぼんやりと眺めていると、隣の同僚が声をひそめて耳打ちしてきた。
「やっぱり見えます?」
「……何が?」
呆気に取られて聞き返すと、同僚は不思議ちゃんの椅子の空きスペースを指さした。
「ああいうことすると呼んじゃうんですよね。一緒に座りましょー! って感じで。無意識なのかな……。背中合わせで座られたら私だったら集中できないなぁ」
その時、不思議ちゃんの席の後ろを通りかかった部長が何かに躓いた。
眉間にしわを寄せながら足元を見回して首をかしげる部長を見て、同僚は同情めいて呟く。
「あの小学生くらいの子、しょっちゅう来て足を引っかけて遊んでますよね」
そういえば、何もないはずの不思議ちゃんの席の周りで躓く人が多い気がする。
彼女の言わんとすることを察し、霊感のない私は曖昧に笑うしかなかった。




