表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全版・怪奇短編集  作者: 牧田紗矢乃
学校・職場ノ怪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/105

十三、見学者

 あれは私が工場の夜勤に入っていた時のことだ。


 私の勤める工場は日中なら人もたくさんいるのだが、夜勤帯となると一気に人気(ひとけ)がなくなる。

 日中と違って稼働する機械が大幅に減るのがその要因だ。


 基本は機械が作業を行ってくれるので、私たちはその整備やその他細々とした作業をするだけでいい。

 人が少ないからこそ、不測の事態でも起こらない限り雑談でもしながらまったりと仕事ができる。それが夜勤最大の利点だった。


 機械も正常に作動し、特にやることがなくなったので、明日の日勤帯で使う資材を倉庫へ取りに行くことにした。

 暇そうにしていた同僚も捕まえ、二人並んでガラガラと台車を押して歩く。


「……誰かいる?」


 同僚が声を漏らした。その視線の先には確かに人影のようなものが列を成して立っていた。

 ひとつ、ふたつ、みっつ――。

 計六体の人影は停止した機械をじっくりと観察し、ぞろぞろと移動してはまた停止した機械に見入っているようだった。


「これは……を……するための器具です」


 今にも消え入りそうなか細い声が何やら説明している。

 私はその声に聞き覚えがあった。


「田中?」


 半月前に急死した同僚の名前を呼ぶ。

 田中と思われる人影はハッとしたようにこちらを向くと、スッと消えてしまった。

 それに続いて五人の見学者も姿を消す。




 その日から、夜勤帯で工場見学をする幽霊を見たという者がちらほらと現れ始めた。

 見学者を引率しているのは田中で、声を掛けると消えてしまうというところまで話が一致した。

 時には稼働していない機械の前に立ち、それを操作して見せていたこともあるという。


「自分が抜けた穴を埋めるために幽霊たちに工場での仕事を斡旋してるのかもな」


 田中は真面目な奴だった。だから、そんな冗談でさえ真実味を帯びてしまう。

 私は心の中でそっと手を合わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ