十、節穴
クラス替えで私に割り当てられたのは、他の子たちより古びた机の席だった。
唯一喜べる点があるとするならば、教室の後ろの方の席だったことだろう。
机の天板の角はささくれ、制服の袖が擦れるたびにパリパリと繊維が千切れる音がする。
おまけに穴まであった。
節穴か何かだろうか。
直径一センチほどのその穴は、天板の右手前側にあった。
シャープペンの先で穴をつついてみれば、ボロボロと何かの塊が出てきた。
前にこの机を使っていた生徒が消しカスでも詰めたのだろう。
授業中に手持ち無沙汰になった私は、穴の中の消しカスを掘り出すのに熱中していた。
ひたすらにシャープペンで穴をつついていると、ついに手ごたえが変わった。
ぼこりと大きな塊が外れ、その奥に空間が現れる。
天板を貫通してしまったのかと驚いて覗き込むと、こちらを見つめる瞳と目が合った。
心臓を鷲掴みにされたような恐怖で、私は反射的に穴にシャープペンを突き立てた。
その瞬間。
教室に悲鳴が響き渡った。
「おい、どうした」
先生がぎょっとして私を見つめていた。
突然の出来事に、何事かと教室がざわめく。
その場はどうにか取り繕ったが、気味が悪くなって穴は元通り消しカスを詰めて埋めた。
あれから十年。
私は、一人暮らしをしている家の押し入れの壁に小さな穴が開いているのを見つけた。
穴の向こうからは光が差し込んでいる。
まさか、隣の部屋の住人がうちの中を覗こうとしているのだろうか。
様子を窺うため、私は恐る恐るその穴を覗き込んだ。
その時、誰かと目が合った。
次の瞬間。
鋭い痛みが私を襲う。
「おい、どうした」
中年の男の声が聞こえたかと思うと数十人のどよめく声が聞こえてきた。
痛みによるパニックと理解の追い付かない状況に、私は助けを求めて警察へ通報した。
病院に担ぎ込まれた私は、右目の失明を告げられた。
右目にはペンのように先が尖ったもので突かれた傷があったらしい。
しかし、その時間に隣の部屋の住人は家におらず、いくら調べても押し入れの壁には穴が開いていなかったという。




