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完全版・怪奇短編集  作者: 牧田紗矢乃
学校・職場ノ怪

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九、鍵と穴

 あれは、私が小学生の時のことでした。

 小学校の校庭で遊んでいると、小さな鍵が落ちているのを見つけたのです。


 初めのうちは友達の中の誰かが自転車の鍵を落としたのだろうと思っていたのですが、そこにいた友人たちは皆、それを知らないと答えました。


 先生たちの所へ届けに行こうという話になった時に、友人の一人がその前に行ってみたい場所があると言いました。

 渋々彼女についていくと、そこはウサギ小屋と校舎の隙間でした。

 よく見てみれば、子供一人がようやく通れるかどうかという幅の隙間の中に、丁度その鍵と同じくらいの大きさの穴が開いた板が埋め込まれています。


 彼女は何とかそこへ潜り込み、手を伸ばして鍵を穴へ()じ込みました。

 そして、手をひねるとガチャリと鍵の開く音が聞こえました。

 それと同時に板がゆっくりと動いて向こう側の景色が見えたのです。


 何の変哲もない、校舎の裏の草っ原が広がっているだけの景色でした。

 鍵を開けたままにしていると扉は勝手に開いてしまうようでした。


 ところが、鍵を掛ければ押しても引いてもビクリともしなくなるのです。

 皆で口々に「不思議だね」と言い合いながら帰路についたのですが、鍵はその穴に刺さったままでした。




 翌日、友人の一人である男の子が体調を崩して学校を休みました。

 私が見舞いに行くと、その子はおむつをしてベッドへ寝かせられています。


 その様子があまりに滑稽なので思わず笑ってしまいました。

 しかし、彼は非常に真面目な様子で下痢がどうにも止まらないので仕方がないのだと言います。


「拾い食いでもしたの?」


 私が聞くと、彼は首を横へ振り机の引き出しから一本の鍵を取り出しました。

 昨日のアレです。

 昨日、皆が解散した後にどうしても気になってしまって導かれるようにこっそり取りに戻ったとのことでした。


 彼がどうしてもその鍵を閉め直してきてくれと懇願するのです。

 私はそれに従って学校へ行きました。


 やったことといえば開いていた扉を閉めて、鍵を掛けただけですが。

 すると翌日、彼は嘘のように元気になったのです。


 それから半年ほど後でしょうか。

 古くなってガタが来ていたウサギ小屋は取り壊され、それと共にあの不思議な扉も消えてしまいました。


 あれは何かを封印するためのモノだったのでしょうか。

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