七、空き缶
僕らの遊びは、いつでも唐突に始まった。
じゃれ合ううちに鬼ごっこを、雪が積もれば雪合戦を。いつも笑顔が絶えなかった。
騒ぎ声がうるさいだとかボールが敷地内に飛んでいったとか、色んな理由で怒られることも多々あったけれど。
そんな僕らの笑顔を、たった一度だけ凍りつかせた出来事があった。
いつものように公園で遊んでいた時だった。
空き缶を見つけた僕らは、自然な流れで缶蹴りをすることにした。
「俺が鬼な。いーち、にー、さーん……」
いつも通り、仲間の一人が鬼になった。
僕は缶が見える木陰に身を潜めた。
十のカウントを終えて鬼が動き出すのを、木陰から息を潜めて窺う。
鬼と缶の距離を目測し、今だ、と飛び出そうとした時。
すぐそばで足音が聞こえた。
僕が慌てて身を隠すと砂を踏む音が背後を通り過ぎる。
見つからずに済んだようだ。
しばらく様子を見て、もう一度飛び出そうと姿勢を整える。
……と、足音が背後から聞こえる。
このドキドキ感がたまらなく好きだった。
動こうとするたびに足音が聞こえるので迂闊に動けない。
しかし、周囲を見回しても鬼の姿は見当たらず、他の友達が缶を蹴りに来る様子もなかった。
――何かがおかしい。
同じように思った仲間たちがぞろぞろと缶の周りに集まってきた。
僕もそちらへ向かう。
誰が鬼だったろう、と確認を始めた矢先だった。
「みんな、見ぃつけた!」
どこからともなく声が聞こえ、空き缶が宙を舞った。
でも、そこには誰もいない。
一瞬の空白の後、僕らは悲鳴をあげて逃げ帰った。




