二、放課後の職員会議
「……では、遠藤先生。お願いします」
時刻は午後九時を少し回った頃だった。
部活に励んでいた子供たちもとうに学校を出て、家で夕飯でも食べている頃だろう。
そんな時間からの会議にもかかわらず、全ての教員たちが会議室に集まっていた。
普段は早々に帰っていくような者も、今日の会議だけは誰一人欠けることなく揃っている。
「ええ……、今回は英語の小テスト、成績上位三名でしたね。九番と五十三番、それと……十四番です」
遠藤と呼ばれた教師は難しい顔をしながら名簿を睨み、答えた。
「また十四番か……参ったな。……仕方ない!」
バン、と万札を三枚机に叩きつける。
他にも数人の教師が同様に悔しそうな表情で札を三枚、机の上に置く。
机の上の札を校長自ら回収してると、にやけそうになるのをこらえて缶コーヒーをすする英語教師の竹田へ手渡した。
今回は竹田の総取りだ。
遠藤からの発表が終わると、また別の教師が名簿を片手に話し始め、金銭のやり取りが行われる。
これは一種の賭博であった。
毎回職員たちが題を決め、それに該当するであろう生徒を三名選出する。
その生徒の出席番号と自分が指定した番号が一致すれば勝ちという至極簡単なルールだ。
初めは嫌がっていても、気が付けばのめり込んでいる教師も少なくなかった。
二クラス×三学年で構成されるこの中学校では、毎回二クラスの担任がディーラーを勤め、月に一度のペースでこの賭博を行っている。
その日の職員会議だけはいつにも増して皆の気合が入るのだ。
今回のようにテストの結果を賭博に用いる場合、その教科を受け持つ教師が有利になる。
というのも、上手く指導すれば自らが賭けた生徒の成績を底上げすることができるためだ。
生徒に関する情報を持っていれば持っているほど有利であるこのゲームのおかげで、この学校は市内有数の『熱心な教育を施し、子供に理解もある良い教師』が多くいる学校として高い評価を得た。
そして、今やその学校は市外からも進学希望者が多く集まる難関名門中学校となっていると言うから因果な話である。




