十五、呪詛返し
「あんた、後で部屋に来な」
夕食中、祖母が不意に私を見て言った。
部活の大きな大会が控えているのに、疲れからかここ数日体調が思わしくない。
部屋に戻って早く眠りたかったがそう切り出せる雰囲気ではなかった。
うちは俗に言う二世帯住宅で、夕食の時だけは祖母も同席してその他の時は別々に暮らしている。
祖母の後ろについて廊下を歩いていると、自分の家ではないような緊張感がこみ上げてきた。
普段は祖母の部屋に入ることを許されていなかったので、その部屋の中を見るのは数年ぶりだった。
祖母は部屋に着くなり押入れに頭を突っ込んで何かを探し始めた。
少しして何の前触れもなく振り向くと、勢いよく液体を吐き掛けてきた。
むっとお酒の匂いが広がる。
驚きで硬直している私の背中を、数珠を持った祖母が強く叩いた。
「……いいよ、シャワー浴びて着替えな」
祖母の不可解な行動から数日。
私の体調が戻り始めた頃に親友のTの母親が亡くなったと連絡が入った。
Tの母親とうちの母は長年の友人で、生まれてから今に至るまで私とTは家族ぐるみの付き合いをしてきた。
それなのに母はTの母親の葬式に顔を出さなかった。
私は体調不良で個人戦を棄権したが、Tが忌引きで抜けたため団体戦のチームには補欠で入ることができた。
結果は準優勝で、今回のメンバーで県大会に進めることになった。
試合にこそ出られなかったけれど、チームの一員としてその場に居合わせることができたのは本当に幸運だった。
県大会の後Tとは何となく疎遠になり、別の高校に進むことになった。
そこでようやく、あの時の祖母のおかしな行動は呪詛返しだったと教えられた。
Tの母親はTより成績が良い私を妬み、呪いをかけていたらしい。それが跳ね返されて亡くなったというのが事の顛末なのだという。
「人を呪わば穴二つ。よーく覚えときな」
祖母の言葉は重く、深く記憶に刻み込まれた。




