十四、除霊
高一の冬、同級生の佳奈美に家に遊びに来ないかと誘われた。
他にも何人かのクラスメイトが集まって、一緒にテスト勉強をするのだという。
小中高と同じ学校で何度か同じクラスにもなったが、直接話したのはそれが最初だった。
佳奈美は虚言癖があると聞いていたからそれとなく避けてきたはずなのに。
「白坂さん頭いいからさ、数学教えてほしいの。今回赤点だとホントにやばくて!」
すがるような彼女の勢いに押され、戸惑いながらも私はその誘いを受けることにした。
約束当日。
佳奈美の家には彼女の取り巻きのメンバーも勢揃いしていた。
「それじゃ、始めるわよ」
言うが早いか、佳奈美は部屋の鍵を閉めた。
そしてグラスに注がれていた液体を私に掛ける。取り巻きたちもその行動をまねした。
「……っ! この匂い、お酒!?」
「白坂さん、あなたに悪霊が取り憑いてるのが見えるわ。私が祓ってあげる」
取り巻きたちへのパフォーマンスのために、まんまとはめられたのだ。
そう気付いて呆然とする私をよそに、佳奈美はでたらめなお経を唱え始める。
しばらくすると部屋の物がガタガタと動き出した。
グラスは床に落ちて割れ、大きな音を立てて照明の電球が弾けた。
驚きのあまり取り巻きの一人が悲鳴を上げて意識を失う。
それでも佳奈美はお経を唱え続け、ポルターガイストは激しさを増した。
「お塩っ!」
パニックになった一人が部屋の四隅に盛られていた塩を掴み、ばらまいた。
盛り塩の結界が壊れたことで部屋の空気が一変した。
気が付くと佳奈美の様子がおかしくなっていた。
声は低くなり、話している内容は不明瞭。目も虚ろで明らかに憑依された人間のそれだった。
怯えた取り巻きは悲鳴を上げ、部屋は阿鼻叫喚の地獄絵図と化している。
「――……これだから自称霊感のある人って嫌なんだよなぁ」
ぼやきながらポケットの数珠を取り出す。
部屋に溜まった雑多な霊たちを片付け、取り巻きたちに憑いていたものも剥がしてやった。
憑き物が落ちると、彼女たちは次々と意識を失っていった。
翌日、佳奈美は学校を休んだ。
霊感があって除霊もできる彼女のことだ。
自分に憑いたモノくらい自分で処理できるだろう。




