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完全版・怪奇短編集  作者: 牧田紗矢乃
人ノ怪

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48/105

十一、扉

 甲高い音を立てながら防火扉が開く。

 きっと、誰かがいたずらでもしたんだろう。

 私は足早にその場を離れようとした。


「ちょっと」


 私を呼び止める声。

 振り向けば、先生がいた。


「どうして扉を閉めたり注意したりしないの」


 先生は鋭く責め立てる。

 周囲の生徒だって見て見ぬ振りをしていたのに、どうして私だけ……。

 呆然とする私に、皆の笑い声が突き刺さった。


 ――そうか、皆は私を悪者にしたいんだ。私を晒し上げて、笑いたいんだ。


 不信感と恐怖が渦を巻き、鉛のように胸の奥に沈殿した。

 教室の扉が開くたび下卑な笑みが思い出される。誰も何も言わないが、思っていることは同じだろう。


 扉が開く。笑われる。扉が開く。笑われる。扉が――。




「駄目ェッ! 開けないでッ!」


 どうせ私を馬鹿にする気なんでしょ? 皆見てるんでしょ? 私のこと見て笑ってるんでしょ?

 知ってるから、開けないで。

 私が何をしたって言うの? どうしてそんなに私が憎いの?


「ちょっと……どうしたのよ? ご飯持ってきたから食べてちょうだい」


 嫌よ。誰なの、アンタ。

 母さんの振りして戸を開けさせようなんて、そんな手には乗らないんだから。絶対に開けさせない。

 合鍵なんて使っちゃって、開けたら私、死んでやるんだから。


 私の叫びは届かず、鍵が開く。

 それを合図にカッターナイフを首に突き立てた。

 女の甲高い声が耳を(つんざ)いた。

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