表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全版・怪奇短編集  作者: 牧田紗矢乃
人ノ怪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/105

五、ピース

 ザラザラザラザラ……――。


 音と共に箱の中のパズルのピースが流れていく。

 二千以上あるこのピースの、どれか一つでも欠ければそれで絵は完成しなくなってしまう。そこで世界は終わるのだ。

 人間はどうだろう。


 幾らでも替えのきく社会に生まれ、必要がなくなれば切り捨てられる。

 一つ一つのピースの存在意義がない。

 どこかのピースが欠ければそれを補うように別のピースが現れる。

 些細な(ひず)みすら生まれることを許さないのだ。


 誰もがその事実を知っている。知ってなお、自らが切り捨てられる日をびくびくしながら待っている。

 本当に無力だ。


 だから、僕はピースを壊す。

 いつ人間の世界が破綻するのかを観察しながら。

 けれど、どんなに壊したって人間界という地獄絵図は壊れない。


 これこそは、というピースを壊しても、すぐに替えのピースがその穴を埋めた。

 埋めきれないほど多くの穴が開けばどうだ? 僕の挑発すら嘲笑うように失われたピースは穴埋めされた。


 あまりに柔軟な対応力に、思わず舌を巻いてしまう。

 しかし、それ故に。


「人間って、本当に可哀想」


 ついさっき壊したばかりの(ピース)を見つめ、そう呟いた。

 彼の代わりはすぐに現れて、ぽかりと空いた穴を埋めることだろう。


 それに引き換え、今頃天界は僕の抜けた穴を埋めるために奔走しているはずだ。

 人間を蔑むばかりではなく、たまには見習えばいいのに。


「ほら、人間なんてこんなにすごいんだからさ」


 パズルの箱からもう一つピースを取り出して潰し、その穴が埋められていく様をぼんやりと眺めて呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ