一、午前零時・怪獣襲来
ぺたぺたぺた……ぴたり。
部屋の真ん前で足音が止む。
うつらうつらし始めていた俺の意識は、その足音で覚醒する。
枕元の時計は午前零時ちょうどを示していた。
狙いすましたかのような正確さで、アイツが俺を殺しに来たのだ。
ガタガタと戸が音を立てる。
鍵のかかったドアをこじ開けようとしているようだ。
その程度ではドアが開かないと見ると、ドンドンと力任せに殴り出した。
それでも無視を続けると、奇声を上げながらドアを強打する。
獣のような咆哮が家中にこだました。
「開けろ、開けろ! 開けろ!!」
廊下の声は言葉にこそなっていないが、そう言っていることは明確だった。
――冗談じゃない。明日は大事な会議なんだ!
俺は頭から毛布をすっぽり被って耳を塞いだ。
尚も続く沈黙に廊下の騒ぎは一層激しさを増す。
ドアをも蹴破らんばかりの暴れっぷりだ。
その騒ぎに気付いた妻が目を覚ました。
「……もう、中に入れてやんなさいよ」
呆れているのか怒っているのか、はたまた寝起きで不機嫌なだけなのか。
彼女はぶつくさ言いながら寝室のドアの鍵を開けた。
廊下から眩い光が侵入してくる。
それと同時にアイツは大声で泣きながら、俺の腹にタックルしてきた。
油断していた俺はそれをかわすことができず、鳩尾にしっかり決まったタックルに一瞬呼吸が止まる。
五歳になる我が家の小さな怪獣は、一丁前に一人部屋で寝たがる。
その癖、夜中に目を覚ますと急に寂しくなって俺たちの寝室にやってくるのだ。
怪獣がやってくると、俺は狭い布団から蹴り出され毛布一枚で夜を明かすことになる。
俺が凍死する前にこいつは一人で寝られるようになってくれるのだろうか。




