四、ペット
友人のミノリがある日一枚の写真をSNSに載せた。
ぐったりと横たわる茶色の猫の写真で、「怪我して弱っていたので保護してみました」の文が添えられている。
気になってコメントを付けてみたが、元が野良なのか逃げ出してきた飼い猫なのかもわからないらしい。
様子を見て病院に連れて行くつもりで、元気になったら遊びに来てほしいという。
私は「楽しみにしてるよ! お大事にね」と告げて会話を終えた。
それから数日。ミノリのSNSには保護した猫が元気になってきたという文面があった。
その文言に釣られるように、無類の猫好きの私はミノリと会う約束をした。
ミノリと会うのはかなり久しぶりだ。
招かれるまま玄関に入ると、嗅ぎ慣れない臭いがむっと迫ってきた。
思わず顔をしかめ、猫の臭いはこんなにきつかっただろうかと考える。
部屋の主であるミノリはこの臭いに慣れてしまったのか、私の反応に不思議そうな顔をしながら奥の部屋へと案内してくれた。
ソファーに腰掛けて他愛もない会話をいくつか挟み、ようやく猫とご対面の時間になった。
「足が悪いみたいで自分で歩かないのよ」
そう言いながらミノリが抱えてきたのは、腐乱した猫の死骸だった。
部屋に充満する異臭がさらに濃くなる。
脇腹の一部は腐敗した肉が削げ落ち、肋骨や内臓が剥き出しになっていた。
――ミノリ、その子死んでるよ。
私が告げようとしたその時。
生命活動を終えたはずの猫の双眸がぎょろりと動いて、こちらを睨み付けた。
私は思いきり悲鳴を上げ、そのまま逃げ帰ってしまった。
あの日以来ミノリのSNSは更新されていないけれど、今頃どうしているだろう。




