表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完全版・怪奇短編集  作者: 牧田紗矢乃
日常ノ怪①

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/105

二十六、神様

「お願いします、助けてください」


 私の元を訪れる人々は口を揃えて懇願した。

 私は何も答えず、ただじっと訪問者を見つめる。

 愚かで安直な人間たちにはその行動が試されているように感じるらしい。


 何度も何度も願いの文言を唱えられるうち、眠気が湧き上がってきた。

 とはいえ、あくびも許されない不自由なこの身。

 必死でかみ殺したあくびで、口の端がピクリと動いてしまった。


「おおっ!」


 私の反応に喜びの声が上がる。

 願いが聞き届けられた合図と勘違いしているのだ。


 ――ある方の身代わりに座らされているだけなのに、全くおめでたい奴らだ。


 腹の底で毒づき、二度と動かぬようにと自らを戒める。

 どうにかして愚民どもに教えてやることはできないだろうか。


「たぬき神社」の愛称で親しまれるこの神社の本当の神様は、この神殿の手前にある石段で物乞いをしている爺さんだ。

 私はここでじっと座って人の願いを聴いているのに飽きたというあの方の代わりに座らされた(しもべ)の化け狸に過ぎない。


 あの方に物を恵んでやれば、それ相応の幸福がもたらされるというのに――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ