二十四、予兆
「金縛りに遭う前って、予兆を感じるって言うじゃないですか。
僕の場合は音だったんですよ。
ウワンウワンって妙に反響する音が響いてきて、気が付いたら体が動かなくなるんです。
金縛りに遭ってる間は毎回女の人が出てくるんですよね。
シルエットが同じだから、たぶん同じ人でしょう。
何か悪さをしたりするってわけじゃなくて、ただそこに仁王立ちになってるんです。
不気味な反面不思議でもあって。ウワンウワンという音が終わると同時に彼女の姿も消えるんですよ。
そうしたら体が動くようになって、ああ、終わったなと思うんです。
でも、気になるじゃないですか。変な音はするし、謎の女は出てくるし。
それで不動産屋に聞いてみたんですよ。『ここは事故物件なのか』って、直球にね。
どうやら自殺した女の人がいたらしいです。
でも何十年も前のことで、時効だろって話になりました。
その後ですか? 今でも住んでますよ。
何度か金縛りはありましたけど、怖くはなくなりましたね。
あの部屋で自殺したのは、ソプラノ歌手を夢見ていた人らしいんです。
ウワンウワンって音は、きっとビブラートの練習なんだろうなぁって。
そう思ったらちょっと微笑ましいでしょ?
僕、ちょっとボイストレーナーを目指してた時期があって。
今は彼女相手にボイストレーニングしたりしてますよ」




