二十二、検索してはいけない
「ねえ、『検索してはいけない言葉』って知ってる?」
「あれでしょ? 変な動画とかウイルスが出てくるやつ」
「そうそう。あれのまとめサイトに最新の注目ワードが出たんだって」
「マジ? 調べてみようよ!」
放課後の教室でダラダラとおしゃべりをしていた少女たちはパソコンを起動し、手早くキーを叩く。
検索結果として表示された一番上のリンクをクリックするが、そこで現れたのは「お探しのページは見つかりませんでした」の文字だった。
打ち込んだ文字列が間違っていないか一文字ずつ追ってみるが、どうやら間違ってはいなさそうだ。
「……なんだ。デマじゃん」
「だね。……あっ」
何の操作もしていないのに突然パソコンの画面が暗転した。
マウスを動かしたりキーボードを叩いたりと試してみるがどれも反応がない。
電源ボタンを押して強制終了しようとしても無駄だった。
諦めて立ち去ろうとした時、画面が光を取り戻した。
どうやらページの読み込みに時間がかかっていただけのようだ。
しかし、さっきまで「お探しのページは見つかりませんでした」と表示されていたサイトに何があるのだろう。
二人が覗き込んだモニターには、アンティーク調の小洒落た扉の絵が表示されていた。
今度はその画面から動かすことができなくなっている。
よほど凝ったプログラムが用意されているのか、どうにも重いサイトだ。
しばらく放置して談笑していた少女たちは、そろそろ読み込みが終わったのではないかと画面を覗き込む。
扉が少しずつ開いているような気がした。
「もしかしたら、こういうムービーが再生されるサイトなんじゃない?」
「ありえる。ゆーっくり変化してくだけの扉の映像とか不気味だもんね」
言葉を交わしつつも、視線は画面に釘付けになっていた。
それから更に数十分。
扉が半分ほど開くと、奥に何かが見えた。
「あっ……」
少女の声に反応するように“それ”の目が光る。
扉と同じアンティーク調のフランス人形だ。
人形の顔がぐにゃりと歪み、まるで笑っているかのような表情になった。
次の瞬間。
一気に扉が開き、モニターから手が伸びてくる。
冷たい手は少女たちの腕をしっかり掴むと、抗えないほど強い力で二人を画面の中に引きずり込んだ。
二人がどれだけ声を上げようと、誰も助けに来てくれない。
泣き叫ぶ少女たちに人形が微笑みかけると、それが合図のように扉が閉まる。
スピーカーから少女の悲鳴が一瞬流れたが、瞬く間に漆黒の画面に切り替わり電源が切れた。




